プロバイダ責任制限法を使いこなそう!
プロバイダ責任制限法とはどのような法律なのでしょうか?今回は、ネット社会で自分を守るために知っておきたいプロバイダ責…[続きを読む]
近年、インターネットによって簡単に情報が入手できるようになり、とても便利になりましたが、その分リスクも増加しています。
何もしていないのに、見も知らない第三者から誹謗中傷をされたり、プライバシー侵害をされることもあります。
また、ネット上には児童ポルノやリベンジポルノ的な投稿もあります。
このような人権侵害行為がある場合、法務局に相談することができます。法務局ではどのような相談ができて、どのような対処をしてもらえるのでしょうか?
この記事では、ネット上の人権侵害があった場合に法務局に相談する方法について解説します。
目次
現代社会では、インターネットはほとんど必須のツールになっています。パソコンやスマホを利用しないという人は、ごく少数に限られているでしょう。
インターネットを利用すると、世界中のどこにいても瞬時に情報を収集することができて、とても便利です。
しかし、便利な反面インターネットでは人権侵害が行われやすいという問題があります。
たとえば名誉毀損行為やプライバシーの侵害行為、リベンジポルノ行為などがあります。
このようなインターネットを通じた人権侵害の事例は、近年どんどん増加している傾向にあります。
法務省の調査によると、平成22年には658件(うちプライバシー権侵害行為が340件、名誉毀損行為が211件)だった人権侵害行為が、平成26年には1429件(うちプライバシー権侵害行為が739件、名誉毀損行為が345件)にまで増加しています。
このように、ネット上で人権侵害的な投稿があった場合には、放置すると情報がどんどん拡散して、被害が大きくなってしまいます。
早期に記事を削除するなどの措置をとる必要があります。
ネット上で誹謗中傷されるなど人権侵害を受けた場合には、そのサイトの管理者に記事の削除を求めることができます。
このとき、プロバイダ責任制限法という法律を利用します。
プロバイダ責任制限法では、ネット上で誹謗中傷を受けた被害者がサイト管理者やプロバイダに対して、発信者情報の開示請求をしたり、記事の削除(送信防止措置依頼)を求めることを認めています。
そこで、ネット誹謗中傷などを受けた場合には、問題となる記事をサイト管理者に提示するなどして記事の削除依頼をすることができるのです。
被害者の言い分に正当な理由があれば、サイト管理者は記事を削除しても情報の投稿者に損害賠償責任を負うことはありません。
また、サイト管理者が任意の記事削除に応じてくれない場合、被害者は裁判所に仮処分を申し立てて、仮処分命令を出してもらうことにより、サイト管理者に記事削除をさせることができます。
ネット上で誹謗中傷行為を受けたりプライバシー侵害行為を受けた場合などには、サイト管理者に対して記事削除ができますが、自分一人では具体的にどのように手続きをすればよいのかがわからないことが多いです。
こんなとき、法務局に相談することができます。
法務局は、日本中に支局があるので、困ったときには自宅の近くの法務局に行って相談すると良いでしょう。
相談に行くと、担当者が、記事削除請求ができることや、記事削除請求の方法を教えてくれます。
そのアドバイスに従って手続きをすすめれば、サイト管理者に記事削除をしてもらうことができるケースがあります。
参考外部サイト:インターネット人権相談窓口(法務省)
法務局に相談をして問題のある記事の削除請求の方法を教えてもらっても、自分ではなかなか手続きができないことがあります。
たとえば、高齢や病気などの理由で、自分でサイト管理者に連絡をとって削除請求をすることができない場合もありますし、サイト管理者に削除依頼をしても応じてもらえないケースもあります。
このような場合には、法務局からサイト管理者やプロバイダに対し、記事の削除請求をしてもらえることがあります。
ただし、相談さえすればどのようなケースでも法務局が削除請求を代行してくれるわけではありません。
法務局から記事削除依頼をしてもらえるのは、実際に名誉毀損やプライバシー権侵害、リベンジポルノなどの人権侵害行為が行われていると認められる場合に限られます。
自分が「誹謗中傷を受けた」と感じていても、必ずしも法務局で人権侵害が認められて削除依頼をしてもらえるとは限らないので注意が必要です。また、自分では記事削除依頼手続きをすることが困難な事例に限られます。自分でできる場合には、まずは自分でするように勧められるでしょう。
人権侵害を受けたことを理由に法務局に記事削除依頼をしてもらいたい場合には、本当に人権侵害を受けていることを、資料を示してしっかり説明して、理解してもらうことが重要です。
警察は、犯罪を捜査して犯人を逮捕するための機関です。
よって、ネット上で名誉毀損などの犯罪行為が行われている場合、警察は犯人を捕まえて検察官に送り、刑事手続きに乗せることが主な仕事になります。
このとき、警察が記事削除の手続きをしてくれることはありません。
また、犯人が特定できたからと言って、被害者にわざわざ通知してくれるとも限りません。
警察にしてみれば、犯罪の取り締まりさえ出来ればよいのであって、被害者の人権保護のためだけに動いているわけではないからです。
被害者が警察に相談に行っても、刑事事件にできる程度の証拠があれば動いてくれますが、証拠がなければ何もしてくれないのが普通です。
このように、警察と法務局はその目的が全く違います。
法務局は人権擁護を目的としているので、警察とは違って記事の削除依頼の方法を教えてくれたり、場合によっては記事の削除請求を代行してくれるので、助かります。
法務局と弁護士とでは何が違うのでしょうか?
ネット誹謗中傷を受けた場合には、弁護士に相談することができます。弁護士に相談すると、誹謗中傷記事の削除請求の方法を教えてくれたり、削除請求を代行してもらうことができます。
ここまでなら法務局と同じですが、弁護士に依頼すると、裁判所を利用して仮処分の申請をしてもらうこともできます。法務局では、仮処分申請まではしてくれないので、弁護士に依頼すると、さらに効果的に記事削除を請求することができます。
弁護士に依頼すると、犯人特定の手続きまでしてくれます。ネット誹謗中傷を受けた場合には、損害賠償請求や刑事告訴をする準備のために犯人を特定する必要があるからです。
そして、弁護士は、この手続きでも、必要があれば裁判所の訴訟手続きを利用します。
法務局では、違法な投稿をした犯人特定の手続きまではしてくれませんが、弁護士に依頼すると犯人を見つけてくれるので、助かります。
弁護士は、ネット上の違法行為の犯人が特定できたら、損害賠償請求の手続きまで代行してくれますし、必要があれば損害賠償訴訟を起こしてくれます。弁護士に依頼すると名誉毀損などにもとづく損害賠償請求(慰謝料請求)までしてくれます。このようなサービスも法務局にはありません。
以上のような点が、弁護士と法務局のサービスの違いです。
弁護士に依頼するとそれなりに高額な費用がかかります。記事削除や犯人特定を依頼したら、数十万円単位の費用がかかることが普通です。
これに対して、法務局で相談をしたり、記事削除請求してもらう場合に費用はかかりません。
このように、費用がかからないことは、法務局に相談する大きなメリットとなります。
法務局に相談して記事削除依頼をしてもらうべきケースとは、どのような場合でしょうか?
まずは、ネット誹謗中傷に悩んでいるけれどもどうして良いかわからないケースです。法務局に相談をして、道筋をつけてもらうと助かります。
また、自分では記事削除手続きをすることが難しい人も、法務局に相談して記事削除請求してもらうと助かります。たとえば高齢や病気などが原因で自分で手続出来ない場合に相談してみましょう。
さらに、自分で削除依頼をしたけれども、プロバイダなどが任意の削除に応じない場合にも、法務局から削除請求してもらうことが効果的に働くケースがあります。たとえば、2ちゃんねるで不当な書き込みをされた場合などにも相談してみると良いでしょう。
弁護士に依頼するお金がない場合にも、法務局で相談をしたり記事削除請求をしてもらう方法が役立ちます。
このように、法務局でのネット人権侵害相談や記事削除請求の代行の制度は、使いようによってはとても役立つことが多いので、ネット上の誹謗中傷やプライバシー権侵害行為に悩んでいる場合には、1度利用してみると良いでしょう。
ただし、最近は、電話で無料相談にのってくれる、誹謗中傷に強い弁護士もいますので、最初から弁護士に相談する人が多いのも事実です。弁護士の良さは、スピードですぐに動いてくれるので、誹謗中傷は一刻も争う問題が多いので、弁護士相談して早期に解決に図る方がよいことが多いのです。
今回は、ネット上で誹謗中傷やプライバシー権侵害を受けた場合に法務局に相談して解決する方法を解説しました。
ネット上で人権侵害を受けた場合、近くの法務局で対応を相談することができます。この場合、記事削除依頼の方法などについてアドバイスを受けられますし、自分で手続出来ない場合やサイト管理者が任意の削除に応じない場合には、法務局が記事削除請求をしてくれることもあります。
法務局は警察とは違って被害者の人権救済のために相談に応じてくれますが、弁護士のように裁判を起こしてまで人権救済してくれることはありません。
自分で記事削除の手続きが出来ない人や、サイト管理者が任意の削除に応じない場合などには、ネットに強い弁護士か法務局に相談してみると良いでしょう。