【2020年成立】違法ダウンロードを規制する改正著作権法を解説!
2020年6月5日、著作権法改正案が成立しました。これにより、違法ダウンロードの厳格化やリーチサイトの取り締まりが強…[続きを読む]
ファイル共有ソフト(P2P)は、簡単に他のユーザーとファイルをやり取りすることができる便利なソフトです。
しかし近年では、このソフトを利用して音楽や漫画の違法ダウンロード・アップロードが頻繁に行われています。
それに伴い、ファイル共有ソフトを利用した人に発信者情報開示に係る意見照会書が届くケースも増えています。
そこで今回は、BitTorrent(ビットトレント)を代表とするファイル共有ソフトの違法性や損害賠償などについて解説していきたいと思います。
ファイル共有ソフトとは、インターネット上で不特定多数の利用者とファイルをやり取りするためのソフトウェアのことをいいます。
特定のサーバに依存せず、対等な立場でユーザー同士が直接通信を行う「Peer to Peer技術(P2P技術)」が使われていることから、P2Pソフトとも呼ばれています。
ファイル共有ソフトの代表として、Winny(ウィニー)・Share(シェア)・BitTorrent(ビットトレント)などがあります。
このソフトを使うことで、社外の人とも気軽に共有できたり大きなファイルも送信できたりするといったメリットがあります。
このソフトは便利な一方で、問題点もあります。
大きく分けて2点ほど確認してみましょう。
一番大きな問題とされているのは、著作権侵害です。
著作権法では、23条に公衆送信権(送信可能化権)という規定を設けています。
簡単にいうと、著作権者は自分の著作物をネット上にあげるかどうか決める権利をもっているということです。
つまり、著作権者に無断でネットに音楽や漫画をアップロードしてしまうと、公衆送信権や送信可能化権の侵害として著作権法違反になるということです。
一方、ファイル共有ソフトをダウンロードだけを目的に使う人も多くいます。
しかし、このソフトは自分がファイルをダウンロードすると同時に、ファイルを他者に送信してしまう仕組みになっています。
そのため、ダウンロード時に意図せず違法アップロードも行っていることになり、結果として著作権侵害をしている人が多いのです。
実際、最初に登場したNapster(ナップスター)というファイル共有ソフトは、共有されていた音楽コンテンツの多くがCDから違法に公開されたものとなってしまい、音楽関連団体の訴えから運営が差し止められることとなりました。
ちなみに、違法アップロードされたコンテンツを違法と知りながらダウンロードする行為も著作権侵害となりますので注意が必要です。
ネットワーク上には、ファイル共有ソフトを標的としたウイルスがばらまかれています。
そのため、このウイルスに感染したことで非公開にしていたファイルも含めてパソコンのデータがネット上に漏洩してしまった、という事案が起きています。
特に企業や組織のパソコンが感染してしまうと、守秘義務のある機密情報が公開されてしまい、大きな問題に繋がる可能性があります。
また、個人のパソコンであっても、家族でパソコンを共有していると家族の個人情報も漏洩してしまうことになります。
共有で使うパソコンはアカウントを使い分け、誰かが勝手にファイル共有ソフトをダウンロードしてしまわないように管理することが大切です。
また、これら以外にもセキュリティ上のリスクが伴ったり、回線への負荷が大きかったりといった問題点も存在します。
先述したように、ファイル共有ソフトでは著作権侵害が深刻化しています。
しかし、P2P技術は誰がアップロードしたのか匿名化することができ、簡単には投稿者を特定できないという難点があります。
そこで匿名相手を特定するために行われるのが、「発信者情報開示請求」です。
発信者情報開示請求とは、プロバイダ責任制限法4条に基づいて、IPアドレスから匿名相手の個人情報を入手するためにプロバイダ(※)に対して行われるものです。
※プロバイダとは、サイトの運営側や携帯会社などを指します。
情報開示が認められればアップロード者の氏名・住所・電話番号などを入手することができ、相手を特定することができます。
このとき、アップロード者の方にプロバイダ側から発信者情報を開示するかどうか確認の書面(意見照会書)が届くことがあります。
この照会書を受け取って、自分が違法アップロードをしてしまっていたことに気づく人も少なくありません。
発信者情報開示請求によって個人が特定されると、その後は訴訟に繋がる可能性が高くなります。
著作権侵害では、民事・刑事の2つの訴訟の可能性があります。
違法アップロードによる著作権侵害は犯罪行為です。
親告罪であるため、著作権者が訴えれば逮捕され刑罰が科されることになります。
違法ダウンロードも同様です。
2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金(またはその併科)が科せられます。
また、著作権者から民事訴訟を起こされる可能性もあります。
民事訴訟で著作権侵害が認められれば、損害賠償請求やアップロードしたコンテンツの削除、謝罪などが求められることがあります。
特に損害賠償はダウンロードされた回数や作品が多いほど高額になり、億単位で請求されることもあります。
実際、今までにファイル共有ソフトで著作権侵害をした利用者が逮捕された事例がいくつかあります。
簡単に見てみましょう。
2013年2月、P2Pファイル共有ソフトを悪用して著作権法違反をしたとして、秋田県横手市の歯科医師の男など合計27人が逮捕されました。
彼らは、漫画「Q.E.D.証明終了」をShareで違法公開していた疑いで摘発されたといいます。
一斉摘発はこのときに4回目であり、その後も定期的に行われているようです。
2019年4月、BitTorrentを使ってアニメの動画をネット上に公開したとして、三重県の会社員が著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕されました。
この男性はアニメやテレビ番組など170作品もの動画を違法アップロードしており、その被害額は約18億円に上るとみられています。
2020年10月、東京地方裁判所がインターネットサービスプロバイダ(ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に対して、BitTorrentに大量の音楽ファイルを違法アップロードしていたIPアドレスの利用者の氏名・住所等を一般社団法人日本レコード協会に開示するよう命じる判決を出しました。
また、11月にソフトバンク株式会社に対しても同様の判決を下しました。
この事例は、ファイル共有ソフトに音楽を違法公開していた45のIPアドレスについて、日本レコード協会が発信者情報開示請求をしたものです。
結果としてログの保存が無かった2つを除き、43のIPアドレスについて情報が開示されました。
日本レコード協会は、著作隣接権(送信可能化権)の侵害による損害賠償請求等を行うためにこの請求を行っており、既に31名の違法アップローダーとは「今後著作権侵害をしない旨の誓約」と「損害賠償金の支払い」に関する合意ができているといいます。
【参考】日本レコード協会:プレスリリース
ファイル共有ソフトを利用すること自体は違法ではありません。
しかし、そこで許諾を取らずに著作物を共有してしまうと違法アップロードになってしまいます。
ただ、故意に違法アップロードをしているならまだしも、先述したように無意識で違法アップロードに加担していた場合に意見照会書や訴状が届いた場合、どうすればいいのかわからなくなってしまいますよね。
このような通知が届いた場合、まずは弁護士に相談してみましょう。
もちろん意見照会書を無視したり拒否の回答をしたりすることはできます。
しかし、正しい対応をしなければ結局開示されてしまう可能性があるので、自分で判断することはあまりお勧めできません。
加えて、訴状を無視すると相手の主張がそのまま認められ、自分に不利な判決が出されることになります。
そのため、早めにファイル共有ソフトと法律に詳しい弁護士に相談し、示談や和解交渉をしてもらうことが大切です。
また、通知が届いた時点で恐怖心からファイル共有ソフトやデータを削除してしまう方がいます。
しかし、パソコンに保存されているデータには自分に有利な証拠も残っていることがあるため、なるべく削除せずに相談するようにしてください。
以上、BitTorrent(ビットトレント)を代表とするファイル共有ソフトと著作権侵害についてご説明してきました。
P2Pによる著作権侵害は、自分が知らないうちにしてしまっているケースが非常に多いです。
トラブルを避けるためには、ファイル共有ソフトを使わないことが確実な対策となります。
とはいえ、既に使ってしまっている人や正当な目的で使いたい人もいらっしゃるでしょう。
その場合にもし発信者情報開示請求の意見照会書や訴状が届いたときは、弁護士に相談することをお勧めします。