削除の仮処分とは|インターネット上の名誉毀損記事を削除する
ネット上で名誉毀損、誹謗中傷の書き込みをされたら「仮処分」によって削除させることができます。裁判所を使った手続きで難…[続きを読む]
インターネット・SNSを利用していると、いわれのない誹謗中傷・嫌がらせを受けるケースがあります。この場合、放置しておくとその情報を第三者が見て被害が広がるので、削除請求をしたり犯人を特定する必要があります。
このような手続きを個人が自分でするのは困難なので、弁護士に依頼することが多いですが、その場合の弁護士費用はどのくらいかかるのでしょうか?
高額になりすぎると負担が大きくなるので手続きを依頼することが難しくなります。
そこで、今回はSNS・ネットで誹謗中傷を受けた場合の削除依頼費用、IPアドレスの情報開示請求費用、犯人特定にかかる弁護士費用を解説します。
ネット上で、いわれのない誹謗中傷・嫌がらせを受けた場合、誰が投稿したのかがわからず、削除請求しようとしても個人では対応が難しい場合が多いでしょう。
投稿の削除請求や、投稿した犯人を特定する手続き等は手順が複雑なため、弁護士に依頼する人が多いです。
ここでは、弁護士ができることと弁護士費用などを解説します。
ネット上で誹謗中傷行為を受けた場合には、弁護士に依頼してサイト管理者に対し、その書き込みの削除請求をすることができます。
サイト管理者に削除請求をする場合、まずは交渉の手続きを利用します。このとき、誹謗中傷されている証拠などを示して説明し、サイト管理者が削除に応じてくれれば問題は解決します。
削除請求にかかる費用は「着手金」と「報酬金」があります。
着手金とは、弁護士に手続きを依頼した場合にかかる依頼料のような費用です。
また報酬金とは、事件の解決内容に応じて、事件が解決した場合にかかる費用です。
インターネット誹謗中傷記事の削除請求(交渉)の着手金の相場は5万円~10万円程度です。
削除が成功したら、報酬金が5万円~10万円程度かかります。ただし着手金を高くして、報奨金をとらないケースもあります。
サイト管理者が任意で削除に応じてくれないケースもあります。この場合には、裁判所に仮処分を申し立てて、サイト管理者に削除命令を出してもらう必要があります。
裁判所の仮処分の場合には、着手金が20万円程度、報酬金が15万円程度が相場になります。
また着手金30万円、報酬0円というケースもあります。
ネット誹謗中傷行為を受けた場合には、投稿削除のみでは不十分です。
不当な投稿をした「犯人を特定」することも必要になります。なぜなら、犯人を特定しないと、損害賠償請求(慰謝料請求)をすることもできませんし、名誉毀損などで刑事告訴をすることもできないからです。
犯人を特定するためには、まずはサイト管理者に対してIPアドレスを開示する交渉を行います。サイト管理者がこれに応じて任意で開示してくれれば、その情報(IPアドレス)にもとづいてプロバイダを特定します。
サイト管理者が情報開示に任意に開示してくれなければ、サイト管理者に対して「発信者情報開示の仮処分」を申し立てる必要があります。この場合、通常は削除の仮処分と同時に申し立てます。
そして引き続いて「プロバイダ」に対して犯人の具体的な氏名や住所、メールアドレスなどについての発信者情報の開示請求をします。
プロバイダが応じてくれた場合、犯人の氏名や住所、メールアドレスなどが明らかになるので、犯人が特定できます。
任意の開示によって犯人が特定できた場合、弁護士の費用は着手金5万円~10万円程度、また報酬金が15万円程度になります。
犯人についての情報開示を請求しても、プロバイダが任意の開示に応じてくれなかったら、プロバイダに対して発信者情報開示請求の「訴訟」を起こす必要があります。
この裁判において、勝訴すれば発信者情報が開示されて犯人が特定出来ます。
具体的には、着手金が20万円~30万円程度、報酬金が15万円~20万円程度になります。
犯人が特定できたら、犯人に対して損害賠償請求をする必要があります。
損害賠償請求をする場合には、犯人に直接請求しますが、もし犯人との示談交渉がうまくいかなければ損害賠償請求の訴訟を起こす必要があります。
この場合、交渉なら着手金は10万円程度、報酬金は回収できた金額の16%程度です。
一方、訴訟になると、着手金が20万円程度、報酬金は回収できた金額の16%程度となります。
弁護士法人YMPでは「発信者(犯人)の特定」を得意としております! 爆サイ、ホスラブ、5ch、2ch、たぬき、各種ブログ、口コミサイト、SNS等の誹謗中傷にお困りでしたら、お気軽ににご相談下さい!
弁護士法人YMPでは「発信者(犯人)の特定」を得意としております! 爆サイ、ホスラブ、5ch、2ch、たぬき、各種ブログ、口コミサイト、SNS等の誹謗中傷にお困りでしたら、お気軽ににご相談下さい!
前述した金額相場をまとめると以下のようになります。ただ弁護士費用は、削除依頼・特定する弁護士事務所によって異なるのであくまで目安となります。
着手金の値段 | 報奨金の値段 | |
---|---|---|
法律相談 | 無料~ | |
削除(交渉・裁判外) | 5万円~ | 5万円~ |
削除請求(仮処分・裁判) | 10万円~ | 10万円~ |
発信者・犯人特定(交渉・裁判外) | 5万円~ | 5万円~ |
発信者・犯人特定請求(訴訟) | 20万円~ | 10万円~ |
損害賠償請求(交渉・裁判外) | 10万円~ | 成果額の10%~ |
損害賠償請求(訴訟) | 20万円~ | 成果額の10%~ |
なお、弁護士の依頼にかかる値段の高さ・安さよりも、各弁護士の人柄や人格をみて、依頼するか最終的に判断することが大事です。
ネットに対する造詣が深い、知識が豊富、経験が豊富ということも重要ですが、被害者に親身になって話を最後まで聞いてくれる方が、被害者にはメリットが大きいことを忘れないようにしましょう。
以下では、弁護士費用についての理解と正しい認識とを深めるために、各ケース別にかかった弁護士費用の具体例を取り上げます。
Aさんは、2ちゃんねるのサイトにおいて匿名の人からいわれのない誹謗中傷を受けたため、弁護士に削除請求の手続きを依頼しました。
すると、当初に着手金と実費が必要だと言われました。Aさんは弁護士に対して5万円の着手金と実費1万円を支払いました。
弁護士がサイト管理者に請求すると削除に応じてくれたので、Aさんは弁護士に10万円の報酬金を支払いました。
結局、Aさんは削除手続きのために合計総額16万円の弁護士費用を支払うことになりました。
Aさんの場合には、サイト管理者が任意に削除に応じてくれたので、かかる費用が安くて済みました。
着手金 | 5万円 |
---|---|
実費(郵送代、通信費) | 1万円 |
報酬金 | 10万円 |
合計 | 16万円 |
Bさんは、インターネット上のブログで自分の知らない間に自分のことをおとしめる、名誉毀損の内容の書き込みがあるのを見つけました。
許せないと思ったBさんは、弁護士に依頼して記事削除と犯人を特定してもらう手続きをお願いしました。
弁護士は、着手金として10万円と実費1万円を要求してきたので、Bさんはそれを支払いました。
ところがサイト管理者が任意の請求に応じないので、仮処分が必要になってしまいました。そこでBさんは弁護士に仮処分の着手金として20万円、実費(裁判費用)3万円を支払いました。
その後、仮処分によって記事の削除とプロバイダの特定ができたので、プロバイダに対して犯人の発信者情報開示請求をしたのですが、プロバイダが犯人の情報開示に応じなかったので、プロバイダに対して訴訟が必要になりました。
そこでBさんは、弁護士に対して訴訟の着手金20万円と実費3万円を支払いました。訴訟は数ヶ月続いて、ようやく勝訴して犯人が特定できました。
そこでBさんは、弁護士に対して報酬金15万円を支払いました。
結局、Bさんは記事削除と犯人特定のために、合計総額72万円の費用がかかることになりました。
ただし、犯人特定後に相手に「慰謝料請求」をすることで、この料金の元を取ることは可能です。
着手金 | 10万円 |
---|---|
実費(郵送代、通信費) | 1万円 |
サイト管理者への仮処分(着手金) | 20万円 |
実費(裁判費用) | 3万円 |
プロバイダへの仮処分(着手金) | 20万円 |
実費(裁判費用) | 3万円 |
犯人特定の成果報酬 | 15万円 |
合計 | 72万円 |
Cさんは、爆サイでの悪口書き込みの削除と犯人特定の手続きを弁護士に依頼しました。
当初に弁護士に着手金として10万円、実費1万円を支払いました。
サイト管理者が削除と開示に応じてくれたので、その情報を利用してプロバイダに犯人の情報開示を請求しましたが、プロバイダは情報開示に応じてくれなかったので、訴訟を起こしました。このとき、着手金20万円と実費3万円を支払いました。
開示請求を受けた後、犯人に対して損害賠償請求を依頼しました。このとき、犯人特定の報酬金として15万円、また訴訟の着手金として10万円と実費1万円がかかりました。
最終的に相手からは50万円の支払を受ける内容で和解したので、弁護士には16%の8万円を支払いました。
結局、Cさんは弁護士に対して、合計で68万円の費用を支払うこととなりました。
相手から50万円返ってきたので、Cさんの出費を差し引きすると、総額18万円を自己負担する形になりました。
着手金 | 10万円 |
---|---|
実費(郵送代、通信費) | 1万円 |
プロバイダへの開示請求仮処分 (着手金) |
20万円 |
実費(裁判費用) | 3万円 |
犯人特定の成果報酬 | 15万円 |
損害賠償の訴訟着手金 | 10万円 |
実費1万円 | |
相手からの損害賠償 | -50万円 |
損害賠償の報償16% | 8万円 |
合計 | 18万円 |
費用面でみれば、マイナスですが、削除できたこと、犯人を特定できたことによる再発の恐れがないことなど、トータル的にはメリットがあったと依頼主は考えています。
誹謗中傷対策は、費用面だけではかたられない、精神的な被害も大きいため、費用が仮にマイナスになったとしても、犯人を特定して再発を防ぐ意味が大きいと考えるべきでしょう。
一人で悩んでいても解決しません。ネット誹謗中傷は、拡大していくことがありますので、被害を最小限に迅速に対応をとる必要があります。
ただネット誹謗中傷のケースは、一概に同じケースはありません。権利侵害の具合がちがったり、出ている被害の大きさによっても、訴訟外なのか、裁判で行うのか方針が大きく変わってきます。
ネットに強い弁護士は、無料相談を受け付けている場合が多く、まずは自分が置かれているネット被害の状況を弁護士に相談することを推奨します。
弁護士に相談する際には、次のポイントを確認してみるのが良いでしょう。
なお、誹謗中傷の相談は、非常にプライバシーの内面まで関わるデリケートな問題ですので、電話ですべてを相談することは難しいと感じる場合は、実際に面談の約束をとって、面会して相談することを推奨します。
遠方から相談する場合は、メール問い合わせに被害を受けているURLを記載して、被害状況を弁護士に正確に把握してもらうようにしたほうがよいでしょう。
今回は、ネット誹謗中傷を受けた場合の記事削除依頼や犯人特定、損害賠償請求をする場合の弁護士費用を解説して参りました。
弁護士の費用は、案件の難易度(サイトが削除に応じやすいか、名誉毀損の権利侵害の度合い)、削除依頼、犯人特定手続き、損害賠償手続きの各手続きによって費用が異なります。
交渉で済めば安く抑えることができますが、仮処分や訴訟が必要になると費用が高額になることが多いです。
また、弁護士事務所によっても、削除の実力(ネットに関する知識も併せ持っている)、費用が異なるので、削除の経験と専門性の高さ、及び、費用の両面のバランスをみて事務所を探すことが重要になるでしょう。
今回の記事を参考にして、賢く弁護士を利用してネットトラブルを解決しましょう。