勝手に作られた「ランキングサイト、比較サイト」を削除したい!
自分のサービスのランキングが勝手に低評価になっていて驚いたことはありませんか?商品やサービスを提供する企業にとって「…[続きを読む]
会社にとって、商品の評判と口コミは重要です。
ネット上で誹謗中傷をされると、評判が低下して商品の売上げが落ちてしまうので、大きな問題があります。特に、ネット通販を主となしている場合、打撃は深刻なものになります。
時として、ライバル企業からネット上で商品の誹謗中傷やネガティブキャンペーンを受けることもありますが、そのような場合、どう対処すれば良いのかが問題です。
今回は、ネット誹謗中傷と不正競争防止法の関係について解説します。
商品やサービスを売る商売をしている場合には、その商品やサービスの評判・口コミが大切です。世間で評判が悪くなると、その商品やサービスが売れなくなってしまうからです。
今は、多くの人がネットを使って情報収集を行うため、ネット上での評判が非常に強い影響力を持っています。特にネット通販で購入する場合、実物の確認できないために購入者の口コミは重要な役割を持ちます。
ただ、ネットの世界は、いわれない誹謗中傷が行われることが非常に多いという問題があります。
とくに、商品やサービスを売っているケースでは、ほとんど必ず類似の商品サービスを提供しているライバル企業があるものですが、ライバル企業が、自社の製品をおとしめるような内容の記事を投稿することもあります。こうした場合、ライバル企業は、「〇社のものよりも弊社のものの方が良い」という論調で記事を投稿したり、購入者や客を装って「がっかり、残念、運営が雑」などの口コミを投稿したりと、記事内容が嘘であったり誇張であったり、悪意があることも多いです。
このように、ライバル企業から自社製品を誹謗中傷されてしまい、評判をおとしめられ、その情報が拡散されると、自社の商品が売れにくくなって、大変な不利益があるので、ネット上で自社商品の誹謗中傷記事や評判・口コミが投稿された場合には、早急に対処をする必要があります。
ネット上でライバル社から商品やサービスの誹謗中傷を受けた場合、通常の民法上の損害賠償請求をすることができます。
この場合、請求出来るのは売上げ低下分の請求です。具体的な売上げ低下分については、訴える原告側で主張をして証明する必要があります。
また、相手企業に対し、偽計業務妨害損罪(刑法233条後段)で刑事告訴することも可能です。
企業の商品やサービス内容について、ライバル社から誹謗中傷を受けた場合には、相手企業に不正競争防止法が適用される可能性があります。
不正競争防止法とは、企業間の公正な競争を維持することにより、適正な取引社会を実現することを目的とした法律で、不正な競争行為が行われないよう、是正するための内容が定められています。
ライバル企業がネット上で自社商品を誹謗中傷した場合、ライバル企業の行為は、不正競争防止法で禁止されている「信用毀損行為」に該当する可能性があります。
ライバル企業の行為が信用毀損罪に該当する場合には、民法上当然に認められる損害賠償請求だけではなく、不正競争防止法にもとづいて差し止め請求や信用回復措置の請求などもできるようになります。
信用毀損行為とは、具体的にどのような行為なのでしょうか?
これについては、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」と定められています(不正競争防止法2条1項14号)。
以下で、要件を順番に確認していきましょう。
まず、「競争関係」があることが必要です。
不正競争防止法上の競争関係とは、広く同種類の商品を取り扱う関係にあれば足りると考えられていて、特定の販売競争に限定されることはありません。
実際の競争関係がなくても、将来において競争関係になる可能性がある場合も含まれます。
現に自社と同じような商品やサービスを販売しているライバル企業であれば、「競争関係」の要件は問題なく満たします。
次に、誰についての信用毀損行為をする場合に不正競争防止法違反になるかという対象の問題があります。
たとえば、相手が、自社を明確に指摘せず、「A社」などの記載によって中傷記事を投稿していることもあります。
信用毀損行為の対象となるのは「他人」ですが、他人には法人も含まれますし、虚偽の事実を流すときに相手の氏名や名称を明らかにする必要はなく、第三者から見て誰のことを言っているのかがわかる程度に特定されていれば足りると考えられています。
そこで、相手企業が自社のことを明確に特定していなくても、ネット記事を読んだ人が、誹謗中傷されている対象について自社の商品であることがわかれば、対象の要件は満たされます。
さらに、「営業上の信用を害する」ことも必要です。不正競争防止法上の営業の事実には、営利目的の事業の場合だけでなく、病院や学校などの非営利の事業のケースも含まれます。
また、企業の活動についての中傷だけでなく、対象企業の事業主や担当者への個人的な誹謗中傷が、営業上の信用を害すると判断されるケースもあります。
「害する」というときには、信用が低下するおそれがある場合を言うのであり、実際に信用が低下していなくてもかまいません。
信用毀損行為が成立するためには、「虚偽の事実」の要件も必要です。虚偽の事実とは、客観的な事実とは異なる事実を意味します。婉曲的な表現であっても、実質的に客観的な事実内容と異なっていたら虚偽の事実となります。
これに対し、単なる意見や感想の場合には事実ではないので、虚偽の事実に該当しません。
「告知・流布する」ことも必要です。
告知は、特定の人に個別に事実を伝えることであり、流布とは、広告などの形で不特定多数の人に対して誹謗中傷の事実を伝えることです。
ネット上で誹謗中傷が行われたケースでは、流布に該当します。
なお、差止請求する場合、故意や過失は不要なので、行為者が真実と信じていたとしても、差止め請求は可能です。
信用毀損行為では、比較広告・比較サイトによる違法行為が行われることが多いと言われています。
比較広告とは、他人の商品と比較して自分の商品を広告する方法ですが、ライバル社が自社の商品を誹謗中傷してライバル社の商品を宣伝する方法は、まさにこの比較広告・比較サイトの類型に当てはまります。
たとえばライバル社が、「我が社の商品は〇〇社の商品より低価格!しかも、〇〇社の商品よりも質が良く使いやすくて安全!高かろう悪かろうの〇〇社のものより自社のものがおすすめ!」、などと記載した場合、実際にはライバル社の方が低価格では無い場合や、質が良いわけではなかったり、安全性が高いわけではなかったりする場合には、信用毀損行為に該当する可能性があります。
比較サイト、ポイントランキング、比較表などもよくサイト上では見受けられますが、実態の情報とあっていないと問題が生じる可能性があります。
それでは、ライバル企業の行為が信用毀損行為となり不正競争防止法が適用されたら、具体的にどのような請求が出来るのでしょうか?
この場合、差し止め請求と廃棄除去請求、信用回復措置、損害賠償請求の4つの請求方法が認められているので、以下で順番に見てみましょう。
まずは、差し止め請求ができます。ライバル社が自社の商品やサービスをおとしめる内容の誹謗中傷記事を載せた場合、その記事を削除させることができます。
次に、廃除請求も可能です。これは、侵害をしたものや、侵害行為によって発生したものを廃棄したり侵害行為に使った設備を除却させたりすることを請求できます。
誹謗中傷記事の場合にはあまり問題にならない可能性もありますが、相手がネット誹謗中傷を行う際に使った道具などがあれば、この権利によって廃棄させることなどが可能です。
信用毀損行為が行われた場合、侵害を受けた者は侵害者に対し、信用の回復のために必要な措置をさせることが可能です。たとえば、謝罪広告を出させることなどが考えられます。
相手が故意や過失によって他人の営業上の利益を害した場合には、損害賠償請求が可能です。不正競争防止法にもとづく損害賠償請求では、民法上の損害賠償請求より請求者側の立証責任が軽減されていて、損害額が推定される規定が設けられている(5条)ので、請求者に有利になっています。
そこで、ライバル社によって自社商品が誹謗中傷された場合、民法上の損害賠償請求を行うよりも不正競争防止法上の損害賠償請求を行う方が、裁判手続きなどをすすめやすいケースがあります。
以上のように、ライバル社によって自社商品やサービスが誹謗中傷された場合、不正競争防止法を適用するとより有効な対策をすることができます。
自分では、不正競争防止法の適用があるかどうか分からない場合には、弁護士に相談してみることも有効です。
会社経営をしている場合などには、今後の参考にしてみてください。
今回は、ネット上でライバル社により自社商品やサービスが誹謗中傷されたケースにおける不正競争防止法による対応方法をご紹介しました。
ネット上で誹謗中傷を受けた場合、基本的には民法による損害賠償請求などの対処が考えられますが、それだけでは不十分です。
この場合、不正競争防止法上の信用毀損行為に該当して、相手に対し、同法による各種の措置を請求することが可能です。
信用毀損行為に該当したら、相手企業に対して差し止め請求や信用回復措置を求めることなどが可能です。損害賠償請求もできますが、不正競争防止法上の請求を行う場合には、損害額が推定されるため、請求者の立証責任が緩和され、請求がしやすくなっています。
ネット上で自社商品が中傷されると、売上げ低下などの大きな問題につながりますので、今後の企業経営において、ライバル社から誹謗中傷を受けることがあったら、不正競争防止法の適用を検討してみると良いでしょう。