嫌がらせ口コミ、評判に不正競争防止法で対抗する方法
会社にとって、商品の評判と口コミは重要です。ネット上で誹謗中傷をされると、評判が低下して商品の売上げが落ちてしまうの…[続きを読む]
最近では、レビューを参考にして訪れる飲食店を決める人が多く、ネットの口コミサイトである「食べログ」による影響が非常に大きくなっています。
しかし、食べログには悪い口コミが書き込まれることもあり、店の悪い評判が広まって客足が減ってしまう恐れがあります。
食べログに悪い口コミを投稿された場合、削除してもらうことができるのでしょうか。
今回は、飲食店が食べログでネガティブな書き込みをされた場合において、削除してもらえるのかどうかを解説していきます。
「食べログ」とは、運営会社カカクコムによる「失敗しないお店選び」をコンセプトにした日本最大級のグルメサイトです。
80万件もの飲食店が掲載されており、月間9,000万人以上が利用し、3,000万件以上の口コミ投稿がされています。
会員制ですが登録は無料で、アカウントを作成したら利用した飲食店への意見や撮影した写真を投稿することができます。
ネット上にグルメサイトはたくさんありますが、2016年に行われた調査では、「利用した経験のあるグルメサイト」で食べログが80%にのぼり、最も多いという結果が出ています。
このように、食べログは人々の飲食店選びに大きな影響力を持っていることがわかります。
飲食店経営者にとって、食べログにどのような投稿がされるのかは非常に重要な問題であると言えます。
これほどまでに大きな影響力を持つ食べログですから、そこに悪い評価をされると店には多大な悪影響が及びます。
一番は、客足が遠のき売上が下がることでしょう。
多くの人が食べログの感想を見て飲食店を決めているので、悪い口コミが多かったり目立っていたりすると、その店には行きたくないと思ってしまうからです。
ただ、食べログは登録する際に本人確認があるわけでもないので、実際にはどのような人が投稿しているのかはわかりません。
やらせのような、虚偽の投稿も簡単にできてしまうのです。
さらに、ライバル店から営業妨害の投稿をされる恐れもありますし、クレーマーから嫌がらせの口コミを投稿されること懸念もあります。
また、ユーザー側に悪意がなくても、店側にとっては迷惑な投稿が行われることもあります。
例えば、自分としては隠れ家的に営業したいので口コミサイトとは距離を置きたいと考えていたのに、誰かが勝手に投稿してネット上に店の噂が広まってしまう可能性があります。
店舗を改装してリニューアルしているのに、以前の古い外観の写真がいつまでも掲載されていてイメージダウンに繋がることなども考えられます。
このように、悪い口コミを放っておくと店側に損失が発生するかもしれないので、投稿を削除してもらう必要があります。
ここからは、食べログの口コミを削除する方法をご紹介していきます。
食べログには利用ガイドラインがあり、口コミを削除してもらえる要件を定めています。
そこで、まずはガイドラインの内容を確認するようにしましょう。
ガイドラインの内容は以下の通りです。
①実際に食事した内容を具体的に記述すること | 店と直接関係がない内容の口コミ、過度な伏せ字・隠語などを使用していて意味が伝わりにくい投稿、食事をしていない場合での投稿は禁止 |
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②店に悪影響を及ぼす内容、かつ事実の確認が難しい口コミは禁止 | 「化学調味料が使われている」「ここで食事したらお腹を壊す」などといった、事実の確認が難しいネガティブ投稿は禁止 |
③衛生面でのクレームはしかるべき場所へ告発する | 食中毒や外注など、衛生面についてのクレームは食べログではなく保健所等に連絡する |
④店の法律違反や契約違反については当局に告発する | 法律で禁止されている食品を出している場合や店員が違法な路上駐車している場合などは、しかるべき当局や関係者に伝える |
⑤個人に対する誹謗中傷や店舗に対する断定的な批判、不適切な表現は禁止 | 「こんなに不味い店に行く価値がない」「ぼったくり」「こんな店に☆5とか頭おかしいんじゃないですか?」などの投稿は禁止 |
⑥店に対する個人的なトラブルの投稿は禁止 | 「別の客と間違えられて代金を請求された」「クーポンと違う料理が出てきた」などの個人的なトラブルの口コミは投稿禁止 |
⑦トラブルになった店に対する口コミは禁止 | 公正な判断ができなくなるおそれが高いため、店とトラブルになった場合には口コミを投稿してはいけない トラブルがあったことを確認できた場合、該当する投稿は削除されることがある |
⑧法令に反する行為や犯罪行為等に結びつく口コミは禁止 | 「食い逃げしてもバレない」「路駐してもバレない」といった不法行為を促す投稿は禁止 |
⑨プライバシー侵害の投稿は禁止 | 「ここのシェフは前科持ちだ」とか「○○(有名人)が常連らしい」などの投稿は禁止 |
⑩金銭などの対価を目的としたやらせ投稿は禁止 | 対価関係のある投稿であることが発覚したら、即刻削除となる 店舗の関係者が、自分の店舗などの関係店舗に投稿をする行為も禁止 |
⑪節度のある表現で投稿すること | 暴言などの不適切な内容の投稿があった場合、食べログの判断で削除される可能性がある |
以上のように、食べログのガイドラインは意外と厳しいです。
削除したい口コミと該当する項目をチェックしておきましょう。
ガイドラインを確認したら、該当する口コミの下部にある「問題のある口コミを連絡する」
をクリックします。
食べログではこうした通報を受けると、専門のチームが口コミの内容を確認します。
ガイドライン違反と判断すると一度口コミの表示を停止し、削除や投稿者に修正依頼を出すといった対応をすると説明しています。
なお、食べログ自身が自主的に口コミの監視を行っており、不適切であると判断したら予告なく削除することがあります。
そのため、問題のある投稿が削除される前に写真撮影をしたりスクリーンショットを撮ったりして、証拠を残しておきましょう。
以上のように、ガイドライン違反で運営側が削除してくれる場合がありますが、必ずしも全ての申請に対応してくれるというわけではありません。
「1時間待たされた」という口コミのように、店側が事実と異なると主張しても運営側が確認することが不可能な書き込みは、削除されないケースが多いです。
このように、削除依頼によって削除されない場合は、法的に削除してもらう必要があります。
その方法が、「送信防止措置請求」と「削除の仮処分」です。
プロバイダ責任制限法3条1項により、送信防止措置請求を行う方法です。
この請求により、投稿の自主的削除を依頼することができます。
基本的に、書面を運営会社に送付することで申請できます。
ただ、「自主的削除」とあるように、削除の最終的な判断は運営側で行うため必ずしも削除されるとは限らないことに注意してください。
裁判所に、投稿の削除の仮処分命令を出してもらう方法です。
仮処分は普通の訴訟と違い、ある程度の要件が認められれば暫定的に処分を下してくれるので、低コストかつ短期間で対処が可能になります。
しかし、ここで問題なのは、「どのような理由であれば食べログの口コミ(掲載情報)を削除してもらえるのか」ということです。
どのような点がポイントとなるのか、簡単に見てみましょう。
店舗側から承諾を得ずに、無断で店舗情報が掲載されている場合、自己情報コントロール権を侵害していると考えられます。
この場合、事実として誤りのある情報が掲載されているのであれば、情報の削除や訂正請求が認められやすいです。
しかし、事実関係に間違いはないが「食べログに掲載してほしくないから削除したい」というケースは削除請求が難しくなります。
というのも、飲食店を経営している場合、広く一般人を対象にしているため個人情報と同程度の自己情報コントロール権を認められるものではないからです。
また、ネット上に店のホームページを作って広告活動をしているのであれば、間違っていない情報を他サイトが掲載したからと言って店舗側の情報コントロール権を侵害しているとは考えにくいとされます。
次に、営業権や営業遂行権の侵害を根拠とすることも考えられます。
店には営業権や営業遂行権により、店舗情報の公開の有無についても選択する権利や利益が認められています。
そこで、食べログが勝手に店の情報を掲載した場合、店の営業権・営業遂行権侵害により掲載拒否ができると考えられます。
しかし、これが認められるためには店の情報が一般に公開されていないことが必要です。
ホームページもSNSも利用せず、広告宣伝をしないで本当に隠れ家的に営業をしているのであれば、営業権や営業遂行権侵害により投稿の削除が認められる可能性があります。
ただ、いまどきネットで宣伝をしない店など非常に珍しいでしょうから、この権利によって削除請求が認められるのもハードルが高いものと考えられます。
「不正競争防止法」では、他人の有名な商品などの表示を自分の商品として表示使用することを禁止しています。
食べログで店舗側の情報を表示することが、この規定に違反すると言えるかどうかが問題となります。
結論としては、よほど有名な店でもない限り難しいです。
不正競争防止法が適用されるには、利用された商品等が元々の営業活動の範囲を超えて名声や信用を得ているというような、「著名な」状態になっている必要があります。
しかし、通常の飲食店の場合、営業地域の範囲を超えて広く知られた状態になっているとは言えないでしょう。
また、食べログは店舗の名を騙って不正に収益をあげようとしたり、店舗に損害を与えようとしているわけでもなく、不正競争の目的を持っているとは言い難いです。
一方、全国的に有名なシェフが所属していており、その表示によって食べログが大きな利益を得る場合などは、不正競争防止法にもとづく記事削除が認められる可能性があります。
食べログが無断で情報を掲載することは、経営者の人格権やそれに基づく名称権などを侵害するとも考えられます。
しかし、これによる削除請求も難しい可能性が高いです。
そもそも、名称権を侵害していると言えるためには、店舗の運営者と食べログの運営者について混乱させる表示である必要があります。
しかし、食べログに掲載されている店が食べログが運営している飲食店ではないことは明らかです。
食べログが店舗経営を偽装したり、反対に店舗経営者が食べログを運営しているかのように偽装したりしているものではなく、閲覧者を混乱させるものとは言えません。
したがって、店舗経営者の名称権や人格権を侵害するものでもないと考えられます。
以上のように、食べログの情報削除が裁判で認められるにはハードルが高いものが多いです。
ただ、必ず認められないというわけではなく、ケースや裁判の進め方によっては認められる可能性もあるので諦める必要はありません。
食べログにまつわる裁判例については以下のページでより詳しく解説しているので、興味がある方はご覧ください。
今回は、食べログで悪質な口コミを書かれた場合の削除方法についてご紹介しました。
食べログは非常に利用者数も多く、一旦悪口を書かれると影響が大きいです。
また、先述したように、裁判所に削除の仮処分命令を出してもらうのは法律に詳しい人でないと難しいと考えられます。
サイトからの依頼では削除されなかった場合は、弁護士に一度相談してみてはいかがでしょうか。