率直な商品レビュー・口コミを営業妨害・名誉毀損と言われた時の対処法
率直な意見としてショップのレビュー評価をしただけなのに、通販会社から「営業妨害、名誉毀損」と言われ、削除請求がくるこ…[続きを読む]
食べログの口コミ投稿について、削除請求をした裁判例にはどのようなものがあるのでしょうか?
以下で、裁判例をご紹介します。
まず、食べログに掲載されていた店舗の画像などの情報が、事実と異なるとして削除請求が行われた事例があります。
この事例では、佐賀県佐賀市内の飲食店が2010年7月に食べログを提訴しました。
この飲食店は店舗のリニューアルをしたのですが、食べログには改装前の写真や情報が掲載されていたので、店舗側が「実際の店の状況とは異なり、客の誤解を招く」と主張して、食べログを運営しているカカクコムに対して、店舗に関する情報の削除を求めました。
この件で、カカクコム側は、「最新の情報ではないことを記載しており、掲載当時の情報としての誤りはないため、違法性はない。」などと反論しましたが、最終的にはカカクコムが店舗の情報や写真を削除し、飲食店側は訴えを取り下げることで合意して解決しました。
この件では、判決によって削除請求が認められたわけではありませんが、話合いで店舗側の要望が認められたことには注目すべきです。
このような結果になったのは、食べログに「写真」が掲載されており、その内容が明らかに現状とは異なることなどが評価されたと考えられます。外観などの情報は、料理やサービスの内容とは異なり、事実関係を明らかにしやすいので、削除請求が認められやすい可能性があります。
次に、食べログ上に「料理が出てくるまで40分も待たされた」と書き込まれた店舗が、食べログに対して削除請求を求めた事例があります。
この事例では、店舗経営者は「40分待たされた」という内容が事実と異なるとして、記事の削除を求めました。その理由としては、人格権や不正競争防止法などを主張しました。
しかし、この事例で、2014年9月4日、札幌地方裁判所は店側の請求を棄却しています。
理由としては、当該店舗は不正競争防止法が適用されるほど著名なものではないし、カカクコム側に不正競争の目的がないことなどが挙げられています。
また、店舗は広く客を募って営業行為をしているのであり、個人と同じような情報コントロール権は及ばないことも理由とされます。
店舗側は、札幌高等裁判所に控訴をしましたが、2015年6月23日、同裁判所も地方裁判所と同様、店側の控訴を棄却しました。
理由としては、原審と同じように、店の名称の利用は店舗や口コミを特定する目的のものなので、名称の冒用ではないことや、店の名称や所在地はすでに一般に公開されているので、同意なしに公開したとしても店の利益を侵害しないから、というものでした。
この判決は「口コミの内容によっては、店舗の評判が低下するなど、一定の営業上の損害が発生する可能性がある」という指摘をして、「店の名誉や信用を毀損する内容の投稿であれば削除が認められる可能性がある」ことに言及しています。
ただし、「社会的相当性のある口コミであれば、店舗側に営業上の損失が発生したとしても甘受すべき」、とも判示しており、この点では店舗側にとっては厳しい内容となっています。
3つ目に、店舗情報の掲載をされたこと自体が問題であるとして、食べログ側に削除請求をした事例があります。
その店舗は、広く宣伝することなく、口コミで「隠れ家的な」お店であることを売りにして営業をしていました。来客は、常連や、常連が紹介する客がメインでした。
ところが、あるとき突然一元の客が多く訪れるようになったため、不審に思った店主が調べてみると、食べログに情報掲載されていることが判明しました。なお、この店では、口コミ投稿を禁じる内容の表示をしていましたが、店舗自体のホームページはありました。
この事例では、食べログに掲載された情報自体が間違っていたわけではありませんが、情報掲載によって店の営業が害されるとして、店舗の経営者は情報の削除を求めました。その理由としては、自己情報コントロール侵害と営業権侵害を主張しました。
裁判所は、「情報コントロール権は人格権にもとづくものであるが、この権利は、不法行為や差し止め請求を認めるためのものではない」と判断して、これは削除請求の根拠にならないと判断しました。
また、営業権や営業遂行権侵害の点については、店舗情報の削除請求の根拠になりうるとはしながらも、本件の店舗が自らホームページをもっていて店舗情報を公開していることなどから、食べログ側が削除請求に応じなかったとしても違法と評価されるものではない、と判断して、やはり店側の請求を認めませんでした。
この事例では、店側がホームページやブログ、ツイッターなどによってすでに店舗情報を公開していたことを理由として店側の削除請求を棄却したので、店側がこのような公開をしていなかったら削除が認められた可能性もあります。
この点について、裁判所は、削除請求を認めるかどうかは「店に対する利益侵害と侵害行為との相関関係」によって判断するとしています。つまり、食べログによる情報公開の程度が、すでに店が発表している店舗情報の公開の程度と変わらないため、削除請求が認められなかったと考えられます。そこで、店による情報公開の程度が低い場合には、相関関係が崩れて削除請求が認められる可能性も残されていると考えられます。
なお、この件では、原告側が控訴をして和解によって終了しています。
和解なので内容までは明らかではありませんが、「食べログ」のサイトから店舗情報の一部が削除されています。
具体的には電話番号と予約が「非公開」になっており、住所は町名までになり、地図は表示されなくなっていますが、店舗情報自体はそのまま残っているようです。
このように、判決では削除をしてもらえなくても、和解によって一部、店側の希望が実現することもあります。