【2020年成立】違法ダウンロードを規制する改正著作権法を解説!
2020年6月5日、著作権法改正案が成立しました。これにより、違法ダウンロードの厳格化やリーチサイトの取り締まりが強…[続きを読む]
あらゆる動画が無料で楽しめる「YouTube」、皆さんも一度は利用したことがあるのではないでしょうか。
実は、便利な一方で著作権侵害が横行しているという問題があります。
ただ、YouTubeにおける著作権侵害で訴えられたという事例はあまり耳にしません。
それは、著作権侵害を著作権者が告訴しないと問題にならないこと(親告罪)や、ネットにおける著作権侵害の事例が多すぎて対応しきれないという実情があるからです。
とはいえ、著作権侵害をしていいというわけではありません。
わずかではありますが、一般人が取り締まられる事例も存在します。
そこで今回は、よく問題となっているYouTubeの著作権問題について解説していきます!
そもそも著作権とは何でしょうか。まずは簡単に定義を確認しましょう。
著作権とは「著作権者が自身の著作物を自由にコントロールする権利」です。
複製する権利、上映する権利、改変されない権利など、多岐に及びます。
次に、著作権保護の対象となる「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条第1項第1号)を指します。
ここで一番重要なのが「創作的に表現したもの」、つまり創作性があるかどうかという部分です。
この「創作」というのは、芸術家が作るような高度な創作性は必要ありません。
個人が取った写真や趣味で描いた絵というのも創作性が認められる「著作物」であり、著作権が発生します。
YouTubeでは様々な形式での著作権侵害が行われています。
具体的に3つのケースについて確認してみましょう。
テレビドラマ・アニメ・漫画など、他人に著作権があるものを勝手にアップロードすることは著作権侵害にあたります。
最近でも、漫画『鬼滅の刃』の最新話が毎週のようにYouTubeにアップロードされており、消えては違法アップロードの繰り返しでいたちごっこのようになっていました。
勿論「違法」アップロードですので、訴えられることもあります。
実際、2019年12月頃、YouTubeに『進撃の巨人』や『ONE PIECE』の漫画を撮影して投稿した男性が著作権法違反の疑いで検察に送致されています(公衆送信権侵害・出版権侵害)。
また、違法にアップロードされたものをダウンロードすることも「違法ダウンロード」として取り締まる対象になっています。
従来では録音・録画できるもの(映画など)に限定されていましたが、最近では漫画などの画像にまで範囲を広げることが検討されています。
違法ダウンロードについては以下のページで詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
YouTubeに動画をアップするときは、自分が撮影した動画の中に著作権侵害となるものが混ざってしまっていないか注意する必要があります。
というのも、意図せずに他人が映り込んで肖像権侵害となってしまうように、許可をもらっていない曲のBGMが混ざっているだけでも著作権侵害になり得るからです。
BGMが入ってしまっている部分だけ切り抜きや無音にするなど、工夫して編集するようにしましょう。
YouTubeには「歌ってみた」「踊ってみた」といった二次創作的な動画も多く見受けられますが、それも著作権侵害にあたる可能性があります。
大きく分けて2つのパターンがあります。
「歌ってみた」「描いてみた」など多くの動画には原作に準ずる音源が必要になってきます。
しかし、著作権者から許可がないままダウンロードした音源や、CDの音源を使用してしまうと著作権及び著作隣接権の侵害に該当します。
JASRACとの関係は後述します。
著作権法10条1項では、「舞踏」が著作物の例としてあげられています。
ここからもわかるように、ダンスも創作性のある表現物の1つであり、著作権保護の対象なのです。
2016年に話題となった『逃げるは恥だが役に立つ』(通称:逃げ恥)の「恋ダンス」も、YouTubeに一般人が踊った多くの動画が投稿されましたが、一挙に削除措置が取られるという事例がありました。
この措置自体は著作隣接権を有するレコード会社からの請求によるものでしたが、振付の著作権侵害による請求も可能だった事例の1つです。
ここで、「YouTubeはJASRACと契約しているから、JASRACが管理している曲なら自由に使っていいんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに契約はしているので一定の場合には個別の許諾を得なくても投稿可能ですが、契約しているからといって自由に使えるわけではないのです。
JASRACが管理しているのはあくまで曲の著作権(作詞・作曲者の権利)の一部であって、著作隣接権(販売しているレコード会社などがもつ著作権)までは管理していません。
そのため、CDや有料配信で入手した音源を一部でも使ってしまうと、著作隣接権の侵害となってしまうのです。
しかし、自分でオフボーカル(オケ)を演奏・作成し、歌ったものであれば、使用許諾について契約しているYouTubeなどのサイトへのアップは著作権侵害にはあたりません(アカペラも同様です)。
また、JASRACの管理下になくても、原作者の許可があり音源が公開されている場合は、それを使った動画を投稿することができます。
それでは、YouTubeによる著作権侵害の対応はどうなっているのでしょうか。
YouTubeでは、コンテンツIDというシステムを導入しています。
これは、著作権者が自己が管理している著作物の違法アップロードを特定・管理することができるシステムです。
これにより、違法アップロードと思われる動画は著作権者がYouTubeに報告をして、削除といった対処をとることができるようになっています。
また、動画を見た視聴者が違反報告をするよって著作権侵害を発見する場合もあります。
ただ、動画投稿者の全員が法律に詳しいということはありませんし、意図せず著作権侵害をしてしまう可能性もあります。
それなのに、一回でも著作権侵害をすると直ちに処置を取られる、となると動画の投稿を萎縮させてしまうことになります。
そのため、著作権侵害をしてしまったとしても初回は事前警告として扱われ、チャンネル自体が停止されることはありません。
3回の警告を受けた場合は、チャンネルの停止・全動画の削除・新しいチャンネルの作成不可という処置が取られます。
先述したように、著作権侵害によって訴える・告訴する場合は著作権者が直接申告する必要があります(これを親告罪といいます)。
現状では黙認によって著作権侵害が見過ごされていることが多いですが、もし著作権侵害として訴えられてしまった場合はどのような法的責任が問われるのでしょうか。
例えば、違法アップロードは以下のような権利に抵触する可能性があります。
以上ように、違法アップロードだけでも多くの権利を侵害することになってしまうのです。
また、これらの著作権を侵害した場合は罰則として「10年以下の懲役と1000万円以下の罰金のいずれか、またはその双方」が科される可能性があります(著作権法119条1項)。
同時に、民事訴訟で差し止め請求や損害賠償請求をされる可能性もあります。
著作権侵害による罰則は、他の刑罰と比べても重い方に分類されます。
動画を投稿する際には十分に注意するようにしましょう。
以上が、YouTubeと著作権問題についての解説です。
現在のYouTubeには違反と思われる動画が多く存在していますが、それはただ黙認されているだけであって、いつ訴えられてもおかしくはありません。
また、自分の動画で他人の権利を侵害している、というのも気分が良くないですよね。
著作権については理解が難しい部分もありますが、なるべく気を付け、ルールを守って楽しく動画を楽しむようにしましょう。