個人情報保護法違反とは?法律の概要と事例をわかりやすく解説
個人情報保護法が適用されたケースには、どのようなものがあるのかも知っておくと役立ちます。そこで今回は、個人情報保護法…[続きを読む]
ネットで勝手に他人の「個人情報」を公開したら「プライバシー権侵害」となります。情報を勝手に公開された人は公開した人に対し公開の停止や損害賠償請求が可能です。
また「事業者」が保有している個人情報を流出させると「個人情報保護法違反」になる可能性もあります。
ではどこまでの情報が「個人情報」の範囲として守られるのでしょうか?個人情報の具体例や意味を正しく理解しておきましょう。
今回は「個人情報」の意味や範囲について具体例を交えながらわかりやすく解説していきます。
個人情報の定義は「個人情報保護法」という法律で明確にされています。個人情報保護法は、個人情報を守るための法律です。
そこでは以下のようなものが個人情報に該当すると書かれています。
「生存する個人に関する情報で、次のいずれかに該当するもの」
個人情報が認められるのは「生存する個人」だけなので、会社などの法人や死者には認められません。
また個人情報といえるには「本人を特定できる」ことが必要です。ただし単独では特定できなくても他の情報と合わせて個人特定できる場合も個人情報となります。
さらに「マイナンバー」「運転免許証の番号」「パスポートの番号」などの個人を識別できる番号も個人情報の範囲に含まれます。
個人情報として保護される範囲は非常に広いので、誰かに関する情報をネットに投稿するときには充分注意が必要です。
他人の個人情報を勝手に漏えいすると「プライバシー権侵害」となります。プライバシー権は明文によって定められる権利ではありませんが、憲法によって当然認められると考えられています。
他人の個人情報を勝手に投稿したら「プライバシー権侵害の不法行為」が成立するので権利者からは差し止め請求や損害賠償請求(慰謝料請求)される可能性があります。
ただしプライバシー権侵害を直接罰する法律はないので、個人などが他人の個人情報を勝手に公開しても「罪(犯罪)」になるとは限りません。
個人情報の漏えいや無断開示によって処罰されるのは「個人情報取扱事業者」のみです。
個人情報取扱事業者とは「事業継続に際し、個人情報を取り扱う人や法人」です。個人情報取扱事業者には「個人情報保護法」が適用されるので、個人情報保護法において定められている罰則が適用される可能性があります。
個人情報取扱事業者の「事業」には、会社やお店の経営などの営利目的の事業だけではなくボランティア、環境保全などの非営利事業も含まれます。反復して何らかの事業を行っており、事業継続に際して個人情報を取得する事業者に個人情報保護法が適用されます。
「個人情報取扱事業者」が保有管理する個人情報を漏えいさせた場合でも、いきなり処罰されるわけではなく、まずは行政庁からの是正勧告や改善命令が行われます。それに従わないときに「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」が科されます。
不正な目的で個人情報を漏えいさせた場合には「1年以下の懲役または50万円以下の罰金刑」が適用されます。
個人情報取扱事業者ではない純粋な個人が他人の個人情報をネットなどにアップしても犯罪にならず罰則は適用されません。民事的な差し止めや損害賠償問題が発生するのみです。
他人の個人情報をネットにアップした場合、「プライバシー権侵害」となるので公開された本人は投稿者へ「差し止め請求」ができます。これは法的な権利なので、アップした人は「差し止め=削除」に応じる必要があります。自主的に削除しないと裁判を起こされて削除命令が出る可能性もあります。
他人の個人情報をネットなどに投稿するのは違法なので、投稿された人は投稿者へ損害賠償請求できます。勝手に他人の個人情報を公開してはなりません。
以下では個人情報で保護される範囲はどこまでなのか、具体例とともにみていきましょう。
ネット上で誰かの「氏名だけ」を投稿した場合「個人情報」に該当するのでしょうか?
純粋に氏名だけを投稿した場合、それを見てもどこの誰か特定するのは困難なので個人情報にならない可能性があります。
しかし他の情報と関連させると個人を特定できる場合には個人情報として保護され、勝手に公開するとプライバシー権侵害となります。
事業者が把握している顧客の氏名を漏えいさせたら個人情報保護法による責任を問われるでしょう。
勤務先の会社名と苗字が投稿された場合、個人情報の範囲に入るのでしょうか?
この場合も「対象者を特定できるか」が問題です。たとえば従業員が全国に何万人もいる大きな会社であれば同姓同名の人もたくさんいるでしょう。よほど変わった苗字でもない限り、会社名と氏名だけでは個人特定が困難ですから個人情報の範囲に入らない可能性があります。
一方従業員が30人しかおらず同姓同名の人がいない場合には、会社名と苗字によって個人を特定できるので個人情報になるでしょう。
大会社でも非常に珍しい苗字の場合や「会社名+勤務している支店名、役職名」などが一緒に投稿されていれば、個人特定しやすくなるので個人情報となる可能性があります。
氏名を表示せず、生年月日と住所のみをネットにアップした場合でもプライバシー権侵害になる可能性が高くなります。
住所を明らかにすると、その場所に行けば表札などから氏名がわかり容易に個人を特定できるからです。
住所も氏名も書かずに単に生年月日のみを投稿した場合にはプライバシー権侵害にならない可能性がありますが、前後関係やひもづいている情報から個人を特定できればプライバシー権侵害となります。
顔写真をネットにアップしたらプライバシー権侵害となるでしょうか?
個人情報には「身体的な特徴」も含まれます。顔認証ソフトなどをみてもわかりますが「顔」は身体的特徴の中でももっとも重要な個人情報の1つです。
勝手に人の顔写真をアップしたらプライバシー権侵害となりますし肖像権侵害にもなります。
運転免許証の番号や銀行口座、クレジットカードなどの番号は個人情報の範囲に含まれます。単に数字を羅列しただけの投稿なら何のことか分からないのでプライバシー権侵害にならない可能性もありますが「免許証の番号です」などと説明を添えて投稿すると個人特定が可能となります。氏名を書かなくてもプライバシー権侵害になる可能性が高いでしょう。
防犯カメラには通行人などの顔や姿が写っています。こういった画像や動画は「個人情報」といえます。設置者が勝手に誰彼かまわず撮影内容を見せてはなりません。
ただし防犯カメラの性質上、設置されている場所で犯罪や交通事故などのトラブルが起こったときには警察などへの提供が予定されているといえます。
そこで正当な目的があるならば必要な範囲において、本人の承諾なしに開示することも許されると考えられます。
たとえば犯罪捜査のために警察に開示したり被害者の申請に応じて加害者が写っている画像を見せたりする場合には違法性はないと考えられます。
一方、おもしろ半分でネットなどに公開すると違法になる可能性が高いでしょう。
今どこにいるかという「位置情報」は個人情報の範囲に入るのでしょうか?
位置情報も、基本的にはプライバシー権の一内容として保護されます。
たとえば渋谷で知り合いを見かけたとき「〇〇を今渋谷で目撃」などと投稿すると相手に対するプライバシー権侵害になる可能性があるので、やめましょう。
名刺には氏名や住所、電話番号やメールアドレスなどの個人情報がたくさん書かれているものですから、基本的には個人情報に該当します。
本人の承諾なしに第三者へ渡すと本人から「承諾していない」とクレームを申し立てられる可能性があります。ただ名刺は秘匿性が小さいので、第三者に渡しただけで慰謝料までは発生しないでしょう。
一方ネットにアップするとより影響が大きくなるので、プライバシー権侵害にもとづいて差し止めや損害賠償請求を受ける可能性が高くなります。
特に企業などの個人情報取扱事業者が大量の名刺データを保有管理している場合には、漏えいすると個人情報保護法違反として責任を問われるでしょう。
個人情報をネットにアップしたとき「個人情報保護法」が適用されて処罰されるのは個人情報取扱事業者のみです。しかし個人がおもしろ半分にアップする場合でも「プライバシー権侵害」となり本人から差し止めや損害賠償請求をされます。
個人情報の範囲は極めて広いので、ネットを利用するときには他人の個人情報を勝手にアップしないよう充分注意してください。