Twitter炎上事件まとめ!炎上の大学生・企業・芸能人とその後
Twitterで炎上する事件にはどういうものがあるのでしょうか?本記事では、大学生・企業・芸能人が起こしたTwitt…[続きを読む]
最近、YouTube、インスタグラムやツイッターなどのSNSで、アルバイト店員が勤務先で撮影した無茶な動画や画像の投稿が行われて炎上する事件をよく見かけます。
このような行為は「バイトテロ」と呼ばれます。あるいは、モラル違反・反社会的行動をTwitterで晒す行為として「バカッター」とも呼ばれます。
一方、バイトテロが起こったとき、わざわざ投稿者のアルバイト店員を特定して、その人の個人情報を暴露する人がいます。
このように、不適切な動画の投稿者を特定し、個人情報を後日になって晒す行為に法的な問題はないのでしょうか?
今回は、減らないバイトテロの投稿者の個人情報を暴露する行為の法的問題点について、考えてみましょう。
目次
そもそもバイトテロとは、アルバイト店員が悪質な悪ふざけ・モラル違反を行って動画撮影し、YouTube・インスタグラム・ツイッターなどのSNSに投稿する行為です。
本人はアクセス数向上などのために軽い気持ちで行うことが多いのですが、見た人に不快感を与えるために瞬く間に動画が「炎上」し、ものすごい勢いで拡散されます。
結果として「勤務先企業」自体に対するイメージが低下し、売上げの減少や株価の低下につながる例もあり、被害は深刻です。
過去に行われたバイトテロには以下のような例があります。
吉野家のアルバイト店員が、メニューに存在しない超大盛りの豚丼を盛りつけ「テラ豚丼」として投稿。
食べ物を粗末にするなという批判が殺到し、吉野家が謝罪しました。
ローソン店員が「アイスのケース」に入り込んで写真を撮影し、フェイスブックに投稿。
ローソンは該当店舗とのフランチャイズ契約を解消し、当面の間休業としました。
そば屋の「泰尚」で店員が食洗機や冷蔵庫に入りこんで寝そべったりしている不適切写真をツイッターへ投稿。
泰尚には「不衛生」という非難が殺到し、店は営業を停止して後日破産しました。
くら寿司で、廃棄済みの魚を拾って再度調理している様子を撮影した動画を投稿。
くら寿司はアルバイト店員を懲戒解雇し、刑事・民事で法的措置をとると発表しました。
大戸屋ごはん処で、マスクをした男性の店員が下半身丸出しにしてお盆を股間にあてる動画を投稿して話題になりました。
最大手コンビニチェーンのセブンイレブンで、売り物のおでん鍋から「直接しらたきを食べて踊る動画」をツイッター投稿して炎上しました。
バカッターの具体例は以上です。バイトテロの不適切動画は日々投稿されており、いまだに炎上するものも少なくありません。
バイトテロのような不適切動画が投稿・炎上すると、通常は大騒ぎになります。
もちろん、企業側にはブランド価値の毀損、クレーム対応、株価下落など大きな損害が発生するので黙ってはいられません。
先述したとおり、アルバイト店員は辞めさせられる処分が与えられ、問題の起こった店舗のフランチャイズ契約を切ったり損害賠償請求をしたりしています。
バイトテロを起こすことの代償はそれなりに大きくなります。
また、炎上がおさまろうとしているのに、不適切動画の投稿者をあえて特定し、その個人情報を晒して「再拡散」する人がいます。
氏名や出身学校名、経歴、メールアドレスなどを載せてなどと書いてツイッターなどに投稿し「#拡散希望」などのハッシュタグをつけるのです。
またインスタグラムの「ストーリーズ」のように、一定期間が経つと自然に消える動画であっても「わざわざ保存」して犯人の情報と共に再拡散する人もいます。
「犯罪歴多数」「借金地獄」「悲報」「動画あり」「誰」などのタイトルで煽って、ブログ記事にアクセスを誘導するケースもあります。
「バカッターのその後」と称するまとめサイトが作られたり、個人を特定されてネット上に晒されることになります。
こうなると再拡散された個人情報と共に、鎮火しかけていた不適切動画が再度炎上したり、半永久的に炎上動画と個人情報がネット上に残ってしまいます。
こういった、ネット上に不適切動画や情報が残ることは、デジタルタトゥーと呼ばれています。
悪ふざけ動画は決して許される行為ではありませんが、その代価は大きく、未来ある若者にはあまりにも大きな負担となります。
再拡散は、アルバイト店員の不適切な行動に対する怒りや正義感から行われている可能性もあります。
「警察が逮捕しないなら、自分で罰を与えてやろう」という考えです。
このような行動を「私刑」と言います。警察などの公権力ではなく私人が勝手に刑罰を与えるからそう呼ばれます。
また「炎上動画を誰が投稿したのか?」は社会的な関心が高いため、個人を特定し犯人の個人情報・実名などを晒すことで自分のアカウントやサイトへのアクセス増加を図ることができます。
アクセスが集中するとサイト収益につながる事があるので、一部のブロガーが炎上に便乗しているケースもあります。
結論から言うと、個人情報を暴露する「私刑」「便乗」は投稿者に対する重大なプライバシー権侵害であり、法的に許されるものではありません。
ところで再拡散を行う人は、バイトテロのアルバイト店員をどうやって特定しているのでしょうか?
実は再拡散を行おうとする人は、YouTube動画の内容、インスタグラム、Twitterとひもづけられた「さまざまなSNS情報」から、情報を収集しているのです。
たとえばYouTubeの動画内に店舗や周辺の状況などの特徴、地域名を推測できるものがあれば、だいたいの地域がわかります。
たとえマスクをしていても、投稿者の「背格好は明らか」になります。
さらにYouTubeとひもづけられているインスタグラムやフェイスブック、ツイッターなどの他のSNS情報(プロフィール、フォロアーや友達情報、過去の投稿)を追いかけていくと、本人の氏名や出身校、経歴、家族構成などの詳細な情報がわかるケースも多々あります。
私刑を与えようとする人は、ストーカーのように不適切動画を投稿したアルバイト店員の情報を追いかけて対象特定しているのです。
不適切動画を投稿したアルバイト店員の個人情報を執拗に調べて、ネット上にさらす私刑行為に法律的な問題は無いのでしょうか?
この場合、情報を勝手に投稿した人に「民事責任」と「刑事責任」が発生する可能性が高くなります。
バイトテロをしたアルバイト店員の氏名や住所などの個人情報をさらし、再度動画を炎上させた場合、アルバイト店員や勤務先の店に対する損害賠償責任が発生する場合があります。
アルバイト店員に対しては、プライバシー権侵害や名誉毀損、また店に対しては業務妨害や名誉毀損になる可能性があります。
個人情報特定によって投稿者を炎上させると、店側にも評判低下やもろもろの対応にかかる労力などの不利益が及ぶので、もとの投稿者(アルバイト店員)と同罪になってしまいます。
投稿者としては「店に迷惑をかけるバイトを許せない」と思って正義感からとった行動でも、それがかえって店にとって不利益となり、店側から損害賠償請求される可能性があるということです。
また、アクセス増やサイト収益につながるからと、気軽に再拡散する行為は、非常に危険です。
実際、過去にビッグエコーがバイトテロ動画の再拡散被害を受けたときには「投稿者に対して厳正に対応していく」と発表しており、再拡散犯人に対する民事責任や刑事責任の追及を示唆しています。
以上より、たとえ正義感からであっても犯人情報を特定してバイトテロ動画を再拡散すると、犯人であるアルバイト本人や店から慰謝料や営業利益の低下分の賠償金請求をされるおそれがあります。
バイトテロ犯人の情報を拡散すると、本人に対する名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立する可能性があります。
名誉毀損罪は、下記3つの要件を満たすと違法性が阻却されます。
バイトテロの犯人情報の再拡散は、上記の要件を満たさないのでしょうか?
確かに不適切動画犯人の情報は真実かもしれません。
しかし「公共の利害に関する」や「専ら公益を図る目的」の要件は満たしません。
再拡散するときには、既に動画は過去に拡散されているので「問題行動を世間に知らしめる」という意味合いはありません。
つまり本当は勤務先の店や会社、警察に報告すべきなのに間違った方法をとっていると言えます。
再拡散すると、あらためて店の名誉が害されて社会的な信用が失われます。
また売上げ低下が発生したり、店にもろもろの対応が必要になって本来の業務が妨害されたりします。
そこで勤務先である店側に対する名誉毀損罪や業務妨害罪も成立します。
不適切動画のアルバイト店員の個人情報を特定して再投稿すると、アルバイト店員や店から刑事告訴されて処罰される可能性があるということです。
以上のように、バイトテロ動画を見つけても投稿者の情報を無理矢理調べて個人情報をネットに晒す行為はしてはいけません。
炎上に便乗する行為は、あなた自身がバイトテロの犯人と同罪やそれ以上の責任が及ぶリスクもあります。
バイトテロの不快な動画を見つけたら、対策として早急に被害店舗や会社に連絡を入れるべきです。そして被害者である店自身による適切な対処を待ちましょう。
またYouTubeやTwitterなどの動画投稿サイトに通報して、不適切動画の削除を求めるのも1つの方法です。
警察にも通報して被害申告する対策も良いでしょう。
このように、間違った行為を発見したときには「ルール」に従った対応が重要です。勢いで私刑を与える行為は禁物です。
また、炎上に便乗する行為は、反社会的行為を助長している、加担していると言われかねない危険もあります。
バイトテロの不適切動画投稿事件は、おそらく今後も減らないでしょう。
発見したときには一緒になって拡散したり犯人の個人情報をさらしたりするのではなく、店やサイト、警察に通報するなど大人な対応をとりましょう。
バイトテロ・ネット炎上は、一度起きてしまうと、起こした本人も、起こされた企業側にも大きな負担となり、完全に削除するのが難しくなります。
鉄則は「ネット炎上」を起こさない仕組みづくりです。
企業側は、ネットに強い弁護士に相談しながら、従業員・アルバイト学生にネットリテラシーの教育を推進していく必要が求められていると言えるでしょう。