日本における「忘れられる権利」vs「知る権利」の最新情報と問題点
忘れられる権利とは、Googleなどの検索結果に過去の犯罪に関する情報が掲載されないよう、検索結果から削除してもらう…[続きを読む]
「デジタルタトゥー」という言葉をご存知でしょうか?
「一度ネット上に公開された情報は、なかなか消すことができない」ことを表す言葉です。
ネット上に不利益な情報が公開されてしまったら、消せないままずっと残り続けて被害を受け続け人生台無しになることになります。
その様子がさながら身体に刻まれたタトゥーのようなのでデジタルタトゥーと言われています。
今回は、ツイッターなどのSNSや匿名掲示板でのデジタルタトゥーの事例としてどのようなものがあるのか、またデジタルタトゥーによる被害を受けた場合にどう対処するのが良いのか解説していきます。
またデジタルタトゥーと関連して「忘れられる権利」についても併せてご確認下さい。
目次
デジタルタトゥーとは、ネット上に「いつまでも消されずに残された情報」です。
ネット上にはさまざまな投稿が行われますが、いったん投稿された内容はそう簡単には消されません。
ネットニュースなどもずっと残りますし、ネット掲示板や個人のブログ、ツイッターやYouTubeなどの投稿内容も、本人やサイト管理者が消さない限りはずっと残ります。
そして、通常デジタルタトゥーが問題になるのは「ネガティブな情報」です。ポジティブな情報ならば、ずっと残っていても不利益はないためです。
デジタルタトゥーが残っていると、その後人生台無しになる可能性があります。
デジタルタトゥーの対象者にはどのような悪影響が及ぶのでしょうか?
デジタルタトゥーの1つ目の問題は、ネット上にデジタルタトゥーが残っている場合、実名検索したらすぐにその情報を発見されます。
就職や結婚の際に、婚約者やその家族、応募先の企業などに不利益な情報を発見されると、結婚が破談になったり不採用になったりする可能性が高くなります。
次に学校や会社で悪評が広がることです。
たとえばバイトテロをした情報が掲示されると、私立の学生なら退学処分になるかも知れません。
会社員の場合、会社にいづらくなって退社せざるを得なくなるケースもあります。
デジタルタトゥーが残っていると、世界中の人がその情報を確認できるので、当然家族の友人知人にも見られるでしょう。
そうなると、家族も周囲から偏見を持たれます。
子どもが学校でいじめられたり妻が近所や勤務先などで肩身の狭い思いをしたりする可能性があります。
デジタルタトゥーによってトラブルや被害が発生するケースにどういったものがあるのか、紹介します。
たとえば本人が痴漢をしていなくても冤罪で「痴漢」として逮捕され、実名報道されるケースがあります。
ニュースサイトに連絡を入れても情報の訂正をしてもらえず「逮捕された」という内容のニュースだけが残り続けるケースも多々あります。
デジタルタトゥーとして、相談が多いのが逮捕歴が残る問題です。特に、逮捕と前科は違います。不起訴(冤罪、誤認逮捕)であっても、逮捕歴がデジタルタトゥーとして残るのは困った問題です。
2ちゃんねるや爆サイ、ホスラブなどのネット掲示板、ツイッターなどのSNSに誹謗中傷や個人攻撃・ネットいじめ・悪口の口コミ投稿をされたり、氏名や住所、自宅マンションの写真などの個人情報を投稿されたりするケースも多々あります。
その場合にもネット上に悪い評判が残り続けますし、個人情報が晒されているといつ何時ストーカーが押しかけてきたり嫌がらせされたりするかわからず、恐ろしいものです。
特に2ちゃんねるは、個人の犯罪歴や逮捕歴、法人の書き込み削除に対しては、厳しい削除方針を持っているので、デジタルタトゥーとして残りやすいのです。
近年では、YouTubeやツイッターを利用した「バイトテロ」の事件が頻繁に起こっています。バイトテロとは、アルバイト店員がバイト先で度の過ぎた悪ふざけを行い、自らふざけた動画を投稿することです。
たとえばアイスクリームの棚に寝そべったり、捨てた魚で寿司を握ったり、牛丼で通常の何倍もの量の肉を盛って撮影したり半裸・全裸で踊ったりして動画投稿するのです。
このようなことが行われると、店に大きな損害が出るので店から損害賠償請求されてしまい、この時点でもう人生台無しなのですが、さらに「バイトテロを起こした人」として有名になってしまい、将来の就職などのさまざまな場面で不利益を受け続ける可能性もあります。
バイトテロは、拡散しやすく、すべてネット上に削除するのは難しくなるという危険性が高いと言えるでしょう。
元の交際相手や配偶者が、交際中(婚姻中)に撮影した性的な動画をネット上に公開してしまうことがあります。そのようなリベンジポルノ行為が行われると、被害者の名誉やプライバシーが大きく毀損されます。
人々の好奇の目にさらされて、安心して眠ることもできませんし、うつ病になってしまう方もおられます。
リベンジポルノは、書き込みよりは、画像、動画として、海外サイトへも拡散していきやすいです。海外サイトの管理人とアクセスできないケースもあり、デジタルタトゥーとしてリベンジポルノは残りやすいのです。
デジタルタトゥーは消せないからタトゥーに例えられるのですが、実は「消せる」ケースも多いのです。
たとえばネット上で誹謗中傷やプライバシー権侵害などの権利侵害を受けた被害者には、その「情報の送信を停止させる権利」が認められています。リベンジポルノの場合にも被害者は重大な権利侵害を受けるので、削除請求できます。
犯罪歴や逮捕歴についても、その後冤罪であることが明らかになった事案であれば削除が認められますし、それ以外のケースであっても相手方との交渉や仮処分によって削除を実現できる可能性があります。
デジタルタトゥーが残ってしまって「どうしようもない」と思っているあなたも、諦める必要はありません。
ではデジタルタトゥーを削除したいとき、どのようにすれば良いのでしょうか?
実はネット上の不利益情報を消す、あるいは人目につかないようにさせる「専門業者」があります。
そういった業者は「削除代行業者」「誹謗中傷対策業者」などと言われます。
ただ、こういった業者を利用するのは危険です。
1つには、弁護士以外のものがサイト管理者に連絡して削除を求めるのは「非弁行為として違法」になるからです。
交渉は「法律事務」の1種であり、法律事務は弁護士しかしてはいけないことになっています。実際に、ネット誹謗中傷対策業者が非弁で違法であると判断された裁判例もあります。
この裁判の影響により、正面切って非弁の誹謗中傷対策をする業者は減っています。
しかし万一そういった業者に引っかかると違法行為によって権利を実現する結果となります。すると「違法業者を利用して削除請求しようとした人」として再炎上し、情報がかえって拡散するおそれもあるので、デジタルタトゥー削除に業者を絶対に利用してはいけません。
また「逆SEO」と言って、対象の投稿の「検索順位」を下げることによって情報を人目につかせないようにする誹謗中傷対策業者もあります。
ただ、この方法では「実名検索」には対応できません。就職や結婚の際などに相手に実名検索されると、デジタルタトゥーの投稿を見られてしまうので、意味がないのです。
このような理由から、デジタルタトゥー対策としてネット誹謗中傷対策業者はお勧めできません。
次に考えつくのは「自分で削除請求すればよいのか」ということですが、デジタルタトゥーの削除を自分で行うのは難しいものです。
サイト管理者が任意に削除対応してくれない場合、それ以上追及するのは困難となるでしょう。
サイト管理者が「しつこい」と感じ、怒って「〇〇の本人が被害者ぶってしつこく削除を求めてきている」などと投稿したら、削除請求がやぶ蛇となって再炎上してしまう可能性もあります。
結論的に、デジタルタトゥーを消したいなら@「ネット誹謗中傷に強い弁護士」に依頼するのが一番確実で安心です。
弁護士であれば、依頼者の代わりにデジタルタトゥー記事の削除交渉しても「非弁」になりません。
「弁護士以外の者が法律事務を行う」のが「非弁」だからです。
弁護士が連絡したことをきっかけに、サイトの運営者が怒ってそのことを拡散させたりはしません。
そのようなことをすると「再拡散によって名誉毀損などの損害が発生した」として、弁護士がサイト管理者に損害賠償請求する可能性があるからです。
弁護士に依頼すると安全にデジタルタトゥーを消去できます。
弁護士であればサイト管理者が任意の削除に応じない場合でも、裁判所で「仮処分」を申し立てて強制的に問題の記事を削除させることができます。
仮処分によって記事を削除させれば、逆SEOと違って「投稿そのもの」が消えるので、実名検索も恐れる必要はありません。
このように、弁護士に依頼すると、安全に、より確実にデジタルタトゥーを消すことができるのです。自分で削除依頼フォームなどを使ってサイト管理者に通報しても消してもらえないなら、早めに弁護士に相談しましょう。
ネットは非常に便利なツールではありますが、権利侵害が行われることも多く取り扱いに注意が必要です。
デジタルタトゥーの被害に遭わないためには、なるべく個人を特定されるような投稿はしないこと、ややこしそうな相手とは関わらないこと、後々炎上しそうな投稿をしないこと、恋人と性的な写真やビデオを撮らないことなどに注意しましょう。
もしもデジタルタトゥーが残ってしまい、削除したい場合には早急に弁護士に相談することをお勧めします。
またデジタルタトゥーと関連して「忘れられる権利」についても併せてご確認下さい。