送信防止措置依頼書の書き方【入門編】
プロバイダ責任制限法では、被害者に「送信防止措置請求権」「発信者情報開示請求権」を認めています。誹謗中傷の該当記事を…[続きを読む]
ネット上で簡単に中古品を売り買いできるフリマアプリ、「メルカリ」。
多くのユーザーが利用している一方、取引したユーザー同士のトラブルも多発しています。
特に、商品の引き渡しに必要な「住所」の情報を悪用される例が目立ちます。
そこで今回は、メルカリにおける住所の情報をめぐるトラブルについて詳しく解説していきます!
メルカリの取引において、住所の情報を悪用したトラブルが多く発生しています。
このように、知らない間にSNS等に住所が晒されてたり、脅されたり、あたかも取引に問題があったかのように事実と異なる内容を書かれたりすることがあります。
住所は特に秘密にしたい個人情報です。ネット上に晒されれば犯罪の標的とされかねません。
家族にも被害が及ぶ可能性もあり、素早く対処することが必要です。
ここで、「住所晒しって犯罪にならないの?」と疑問に感じている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、単に住所や氏名だけを書かれて晒されただけの場合は犯罪になりません。
もちろん、本人の承諾なく住所や氏名をネット上に晒す行為は、プライバシー侵害となる可能性がありますが、不法行為として損害賠償請求などの民事責任を問えるにとどまり、刑罰を受けさせることはできません。
他方、単に住所や氏名の情報が掲載されたにとどまらない場合には、以下のように犯罪が成立する可能性があります。
名誉毀損罪とは、公然と人の社会的評価を低下させる具体的な事実を適示する犯罪です。
例えば、
このように、住所や氏名の記載だけでなく、「偽物を販売した」、「虚偽主張で支払を拒んだ」という社会的評価を低下させる恐れのある具体的な事実を記載していれば、名誉毀損罪が成立する可能性があります。
名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金が科せられます。
侮辱罪は、具体的な事実を摘示せずに、人を侮辱する犯罪です。
侮辱とは、「他人の人格に対する軽蔑の価値判断を表示すること」、平たく言えば「馬鹿にすること」です。
例えば、
「○山×彦は、マナーのなっていない社会人として最低な人間です」
「東京都○○区××町1丁目2番××号。この家の住人は馬鹿者です。」
このように住所や氏名の記載だけでなく、「マナーのない最低な人間」、「馬鹿者」という軽蔑的な記載をしていれば、侮辱罪が成立し、拘留又は科料に処される可能性があります。
脅迫罪とは、本人もしくはその親族の生命・身体・自由・名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合に成立する犯罪です。
告知される害悪は、相手に恐怖心を抱かせる内容であることが必要です。
例えば、
「お前の住所はわかっている。火事の用心。」
「○山×彦は万引きの常習犯だ、と書き込んでやる」
これらは、放火行為や名誉毀損行為といった害悪を受ける恐怖心を抱かせる内容ですから、立派な脅迫行為です。
また、脅迫によって、相手に義務のないことを強いたり、権利の行使を妨害したりする行為は強要罪になることもあります。
例えば次のようなものです。
脅迫罪では2年以下の懲役または30万円以下の罰金、強要罪では3年以下の懲役が科せられます。
では、「警察にいってやる」「弁護士に相談して法的に対処させてもらう」との書き込みは脅迫にあたるのでしょうか。
脅迫罪において告知される害悪の内容は、それ自体が犯罪となるものに限らず、適法な行為でも脅迫行為にあたるとする考えが通説とされ、これを認める判例(大審院大正3年12月1日判決)もたしかに存在します。
しかし、例えば
「今後、このようなことがあった時は、直ちに刑事告訴をします」
「7日以内にお支払いがないときは、法的措置をとります」
といった文言は、弁護士ならずとも、日常社会で用いられている表現です。
これらが、すべて脅迫罪となるならば、毎日大量の人が逮捕されることになります。常識から考えて、そのような結論が間違いであることは明らかです。
先の判例も、100年以上前のものであり、しかも、判決の結論に影響しない傍論として脅迫罪成立の可能性に言及したに過ぎません。
したがって、原則としては、適法な行為を告げることは脅迫罪とならないと考えて問題ありません。
実際、適法な行為の告知は脅迫行為に該当しないという学説も有力に主張されています。
また、通説の立場からも、例えば、犯罪の被害者が「今後、このようなことがあれば刑事告訴します」と告げることは、告訴権という権利の濫用にあたらない限りは、「正当行為」として違法性がない等と主張されています。
この考え方からは、例えば、真実は告訴するつもりがないのに、相手を精神的に追い詰めるだけの目的で、週に何度も「告訴してやる」とメールや手紙を送りつけたというようなごく例外的なケースであって初めて権利の濫用として違法な脅迫行為と評価されるでしょう。
恐喝罪とは、相手の犯行を抑圧しない程度の暴行・脅迫を手段として、財物を交付させたり、財産上不法な利益を得た場合等に成立する犯罪です。
例えば次のような場合が考えられます。
恐喝罪に該当すると、10年以下の懲役が科せられます。脅迫・強要と比べると重い犯罪です。
警察が動くかどうかは、トラブルの内容次第です。
警察は、いわゆる「民事不介入の原則」という方針をとっているので、商品に傷があったから代金を返還してほしいとか、説明と違っていたから慰謝料を払って欲しいなどの民事問題に過ぎないトラブルには対応しません。
これに対し、ブランド品と称して偽物を販売することは、詐欺罪や商標法違反などの犯罪ですし、薬物やわいせつ物などの禁制品を販売することは、大麻取締法違反やわいせつ物頒布罪などの犯罪ですから、当然に警察の捜査対象となります。
メルカリトラブルを発端として、ネット上に名誉を毀損される書き込みをされたとか、侮辱的な記載をされたという場合も、名誉毀損罪、侮辱罪という立派な犯罪ですから、警察は対応してくれます。
住所が晒されたことによってストーカー被害に遭ったり、家に落書きをされるといった実害が起きている場合も、ストーカ-規制法違反、器物損壊罪という犯罪ですから、同様です。
ただし、腰の重い警察を現実に動かすには、それなりの労力が必要であり、被害を受けたなら、弁護士に依頼して犯人を特定したうえ、刑事告訴状を作成し、警察が正式受理するよう働きかけてもらうべきでしょう。
それでは、実際に住所が晒されてしまったり、住所を晒すと脅されたりしたときはどうすればいいでしょうか。
商品を買う前の段階や、匿名配送にしていてこちらの住所がわからないはずなのにハッタリで住所を晒すと言ってきていると考えられる相手は、ブロックして無視することが一番です。
メルカリには、トラブルが起きた際にサポートしてくれる「メルカリ事務局」があります。
メルカリ運営側は、トラブルはまずユーザー同士の話合いで解決するよう希望しています。
しかし、
には、事務局への問い合わせを要請しています。
このような場合にはメルカリ事務局に相談するようにしましょう。
ネット上に住所を晒されてしまった場合はその投稿を削除するようにしましょう。
投稿の削除については、以下の2つの方法があります。
管理人や運営会社などに連絡し、投稿の削除を求める方法です。
プライバシー権を侵害されている被害者には、その侵害行為の差し止めを求める権利があります。
このため、ネット上に住所を晒された場合、被害者は、サイトの管理者・運営者に対し侵害状態の除去、すなわち記載の削除を求めることができます。
多くのSNSなどには問い合わせフォームや通報ボタンがあるので、それを利用して削除依頼をしましょう。
「送信防止措置依頼書」という書面を送ることで、削除(送信防止措置)を依頼することもできます。
しかし、被害者の請求に対して任意に応じるかどうかは、管理者・運営者の判断次第であり、通報したからといって必ずしも削除されるとは限らないので注意してください。
裁判所に申し立て、削除の仮処分命令を出してもらう方法です。
仮処分は通常の本訴訟とは違って短期間で法的拘束力のある削除命令を発令してもらえますし、本訴よりは弁護士費用を抑えられるメリットがあります。
取引をした相手(住所を晒した相手)が誰なのか特定したいと思うのであれば、「発信者情報開示請求」を行いましょう。
個人を特定できれば、慰謝料を含む損害賠償請求を行ったり、犯人を特定した、より受理してもらいやすい刑事告訴を行うことができます。
ただし、発信者情報開示請求は時間との勝負でもあるため、実行するのであれば早めに行動にうつすことが必要です。
メルカリで事前に住所トラブルを回避するためには、「住所を知られないようにすること」と「相手を怒らせないようにすること」を意識する必要があります。
メルカリでの配送方法には、「らくらくメルカリ便」と「ゆうゆうメルカリ便」があります。
これらでは匿名配送をすることができ、相手に住所などを知られる心配がありません。
取引後ではこの設定を変えることができないので、取引を行う前に匿名配送に設定することが必要です。
そもそも住所晒しのようなトラブルでは、相手に問題があることはもちろんですが、相手を不快にさせるような対応をしてしまったことにも原因があることも多いです。
そのため、トラブルを回避するには取引をする前に以下のような点を注意するようにしましょう。
一番大切なのは、丁寧な対応を心がけることです。
顔も名前も知らない相手であっても、社会人として最低限のマナーには気を付けるようにしましょう。
以上が、メルカリで住所晒しといったトラブルに巻き込まれたときの対処法です。
ネットで個人情報が晒されると瞬く間に拡散され、意外なところから被害を受けることがあります。
また、一度インターネットにあがったものは完全に消去することが困難です。
そのため、晒し被害などにあった場合は、拡散される前の迅速な対応が重要になります。
警察が動いてくれず、対応に困っているのであれば、無料相談などを活用して弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。