利用者も逮捕されてしまうの?漫画村事件とその問題点

manngamurajikenn

2017年以降、政府も巻き込んで社会問題となった「漫画村事件」。
その実態や経緯はどんなものだったのか、利用したユーザーも罰せられてしまうのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は「漫画村事件」について、法的な問題点や詳しい経緯とともに解説していきます。

「漫画村事件」とは

「漫画村」は2016年1月に、登録不要かつ無料な漫画サイトとして開設されました。
しかし、このサイトに掲載されている漫画のほとんどが違法にアップロードされたもので、所謂海賊版サイトと呼ばれています。

また、漫画村では次第に漫画の数が増えると同時に、雑誌や小説、写真集まで掲載するようになり、
ピーク時の利用者数は月間一億人を超えていたともいわれています。

事の始まりは2017年、口コミで次第に有名になった「漫画村」は、同年に講談社など複数の出版社から刑事告訴されました。

2018年には日本漫画家協会や漫画家の交流団体であるマンガジャパンなどから声明が発表され、多くの人が被害を被っていることが明らかになりましたが、その後も有料化サービスなど運営を展開していきました。
また同年、事態の深刻さを感じ取った日本政府は知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議を開き、違法サイトへのブロッキングを要請します。

2019年には元運営者とその協力者が逮捕され、実刑判決も出ました。

この一連の騒動は「漫画村事件」と呼ばれ、海賊版サイトはそもそも違法なのかといった様々な問題を浮き彫りにすると同時に、社会的に大きな注目を浴びることになりました。

漫画村は違法なの?

「でも漫画村って違法じゃないって聞いたけど…?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
漫画村が違法であるか否かについては多くの議論がされています。

では、一体何が問題なのでしょうか。法的な2つの問題点に注目してみましょう。

漫画村内で管理していない?

まず漫画村は、「他(漫画村外)のサーバーにアップされた漫画を閲覧させているだけなので違法ではない」と主張しました。

そもそも日本の法律では、許可を得ずに無断で著作物をネットにアップロードすることは「公衆送信権」の侵害になります(著作権法23条1項)。
一方で、「インターネット情報検索サービスにおける複製」であれば著作物を自由に利用することができるのです(旧著作権法47条の6、現行著作権法47条の5)。

例えばGoogleは、検索サービスを提供するため、一度インターネット上にある情報をサーバーに複製し、検索結果として表示します。
このような場合、著作物を複製はしているものの、違法にはならないという著作権の制限がされています(現在では情報検索サービス以外にも広げられています)。
漫画村はこのGoogle検索と同じように、違法にアップロードされている書籍へリンクを繋いでいるだけで、やっていることは検索サービスと同様だと主張しました。

しかし、「インターネット情報検索サービスにおける複製」であっても、違法にアップロードされたことがわかった時点で、その検索サービスを停止しなければなりません
また、漫画村内に画像がないとしても、漫画村によりそれらのリンクが管理されているのであれば、漫画村内で管理していると評価することができます。

以上を踏まえると、漫画村外で管理されているから違法ではないと言い切ることは難しく、違法と判断される可能性が高いと考えられます。

海外で運営している?

漫画村は「海外で運営しているから日本の法律が適用されない」という主張もしました。
日本とは著作権の規定が異なる、あるいは著作権がない国にサーバーを置いているから日本の法律が適用することができないという議論です。

しかし、海外にサーバーを置いているからといって、日本の法律が適用されないとは限りません。

例えば、ベルヌ条約5条(2)では「保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる」と規定されています。また、著作権侵害は、不法行為というものにあたりますが、国外との関係での不法行為は「加害行為の結果が発生した地の法による」ともされています(法の適用に関する通則法17条)。
日本の作者や出版社等の著作権が侵害されたということは、加害行為の結果は日本で発生していると言えます。
実際に、サーバー所在地を問題とせずに著作権侵害を認めた裁判例もあります(東京地裁平成25年5月17日判決)。

一般的な感覚で考えても、漫画村は日本語のサービスを提供し日本人が利用していたもので、日本の法律が適用される可能性が高いと言えるでしょう。

運営者への制裁は?

では、違法と判断された場合、運営者はどんな制裁を受けることになるのでしょうか。

2019年7月までに、著作権違反容疑で元運営者とその協力者計4人が逮捕されました。
このうち「キングダム」を漫画村のサーバーに保存したとする藤崎孝太被告と伊藤志穂被告の2名に対して、懲役1年6カ月執行猶予3年・罰金50万円の判決、懲役1年2カ月執行猶予3年・罰金30万円の判決がそれぞれ下されました。
この2名は、実際に違法にアップロードしたものとして有罪判決を受けました。

主犯とされる星野路実被告の判決はまだわかっていませんが、被害額3200億以上と考えられていることから数百億円から数千億円の損害賠償がされるという見方もあります。

漫画村でダウンロードした利用者はどうなってしまうの?

漫画村を利用したことがある人にとっては、利用したユーザーも処罰対象になってしまうのかということが一番気になることでしょう。

現在のところ日本では、違法と知りながらダウンロードすることが著作権侵害として違法になるのは、録音と録画に限られています(著作権法30条1項3号)。
漫画村は画像の閲覧で、録音でも録画でもないため、現在の法律では刑事罰はありません(損害賠償請求はあり得ます)。

したがって、現在の著作権法では利用ユーザーまで逮捕されることはないと考えられるでしょう。
ただ、漫画村事件をきっかけとして著作権法の改正が検討されています。

今回の事件に関与したユーザーが罪に問われることはありませんが、漫画村事件をきっかけに著作権法が改正されると、今後利用した一般ユーザーにも影響してくる可能性は十分にあると言えます。

その他問題点

漫画村事件は著作権上の問題のみならず、他の観点からの問題点も注目されました。
その例としてあげられるのが、ブロッキングとセキュリティ上の問題です。

ブロッキング問題

日本政府は漫画村といった海賊版サイトへの緊急措置として、ユーザーが閲覧できないように接続を遮断する「ブロッキング」を行うようインターネット会社に要請しました。
「漫画村」に加え、「Anitube」や「Miomio」といった違法サイトがブロッキング対象となり、NTTグループによってこの3つのサイトにブロッキングが実施されました。

ここで問題となるのが、ブロッキングが「通信の秘密」や「表現の自由」の侵害にあたるということです(憲法21条2項後段、電気通信事業法4条1項)。

ブロッキングは一方的にネットでの閲覧が規制されるということであり、個人間の通信を第三者が勝手に把握すること(通信の秘密の侵害)ですし、検閲(憲法21条2項前段)にも繋がりかねないことです。
憲法上の権利と照らし合わしてもブロッキングはするべきではないという声が多くあがりました。

日本インターネットプロバイダー協会などがブロッキング反対の声明を発表する中で、漫画村の被害を受けていた出版社からは賛成の声があがっており、人権と著作権者の利益のバランスをどう保っていくかの議論に今後も注目です。

セキュリティー上の問題

漫画村が閉鎖された現在では、その後継とも考えられる海賊版サイトが次々と登場しています。
これらが著作権侵害の被害を増やしていることはいうまでもないですが、実は利用者にも多大な被害をもたらすことが明らかになっています。

ウイルス感染

海賊版サイトの中には広告によって収入を得ているものが多く存在します。
そのサイトに表示される広告をタッチしてしまうとウイルスに感染する可能性があるのです。

また逆に、ウイルスに感染しましたという警告を表示させて、別のサイトに誘導することもあります。
ウイルスに感染すると勝手に個人情報が抜き取られ、クレジットカードの不正利用がされたり、Twitterアカウントを乗っ取られたりする被害にあってしまいます。

仮想通貨の採掘

仮想通貨では「マイニング(採掘)」という稼ぎ方があります。

マイニングとは、コンピューターの計算能力を使って仮想通貨の取引の手助け等をすることです。スマホのCPUが勝手に使われるので、充電やバッテリーの消耗が早くなったり、動作が重くなります。
マイニングを行った人には報酬として仮想通貨が支払われ、その儲けが海賊版サイトの運営者にまわっているのです。

海賊版サイトの利用は著作権者のみならず、利用者にも悪影響をもたらします。

まとめ

漫画村事件以降、海賊版サイトについて様々な議論がされていますが、少なくとも合法とは言えません
また、今後の法整備によっては利用者も罰せられると同時に、ウイルス感染といった被害も被る可能性があります。

加えて、海賊版サイトでの儲けは違法行為を行っている運営者の手元に入り、本来お金が届くはずの著作者には一銭も入りません。無料で便利であることは否定できませんが、著作者の収入が減り、漫画を描くことをやめる人が出てしまったら元も子もありません。

違法にアップロードされたものは閲覧しないようにし、正式な方法で漫画を楽しむようにしましょう。

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