ネット上の殺害予告、どこから逮捕されるの?|犯罪になる基準とは

ネット上の殺害予告はどこから捕まるのか

近年、ネット上で「殺害予告」や「爆破予告」といった犯行予告をする人が増えています。
とはいえ、その多くは本気ではなく冗談半分で書き込みが行われています。

ただ、その面白半分で書き込んだ殺害予告が重大な犯罪になることをご存じでしょうか。

「殺害予告してしまったけど、バレない?」
「どこからが捕まる基準なの?」

今回はそんな疑問をもつ方に向けて、ネット上の殺害予告について詳しく解説していきます!

ネット上の殺害予告とは?

インターネットは、その匿名性からも誰もが気軽に書き込める空間になっています。
そのため、「面白そうだったから」「イライラしたから」といった安易な理由で殺害予告を投稿してしまう人が後を断たず、逮捕される事例も多くあります。

まずは、最近の殺害予告事例を確認してみましょう。

最近の殺害予告事例

アニメ監督への殺害予告

2020年5月、アニメ『けものフレンズ』の監督が殺害予告を受けたとして、警察に被害届を提出したことが判明しました。

その後、6月に容疑者である京都府に住む20代の男性が脅迫・威力業務妨害の疑いで逮捕されています。

男性は「監督に個人的な恨みがあった。実際に危害を加えるつもりはなかった」などと供述してたようです。

人気棋士への殺害予告

2020年7月、将棋界の若手棋士への殺害予告を日本将棋連盟に送信し、会社員の男性が威力業務妨害容疑で逮捕されました。

連盟サイトの問い合わせフォームに「対局を辞めさせなければ、殺害する」といった内容を送信していたと報道されています。

男性は、「テレビを見ていて態度にいらっとした」「こんな大事になるとは思わなかった。申し訳ない」と述べているそうです。

芥川賞作家への殺害予告

2020年10月、芥川賞作家が殺害予告や誹謗中傷などを書き込んでいた人に対して損害賠償(450万円)を求める訴えを提訴し、口頭弁論が開かれました。

殺害予告自体は2018年のものでしたが、当時は逮捕にまで至らず、その後も執拗な名誉毀損や誹謗中傷が行われていたためこのような措置に至ったようです。

殺害予告による社会的影響

上記のように、最近でも頻繁に殺害予告による逮捕が行われています。
では、なぜネット上の殺害予告が逮捕されるほど重い犯罪行為だと考えられているのでしょうか。

①被害者側の対応

「明日○○大学で大量殺人をします!」
「来月開催するイベントで□□を殺してやる」

以上のような殺害予告を受けると、指定先が学校なら休講に、テーマパークなら休園にしなければなりません。
また、個人が指定されているのであれば、その人が登壇するイベントを中止にする必要があります。

利用者や参加者に向けた対応など、後処理に追われることになります。

②営業損失

イベントが中止になったりすると、本来そこで得られた利益がなくなります。

その結果、決して少なくない額の損失が発生し、そこに勤める人々にとって大きな痛手となってしまいます。

③警察の動員

殺害予告を受けると、警備や怪しい人物の捜査に向けて警察が動くこともあります。

特に大規模な殺害予告になると多くの人数が動員されるため、他の事件への捜査が滞るなどと支障が出てしまいます。

④社会全体の影響

被害を受けるのは殺害予告を受けた本人に止まりません。

電車が動かなくなれば通勤している人全員に迷惑がかかりますし、楽しみにしていたイベントが中止になれば誰だって悲しいものです。

たった1つの書き込みで、何百・何千人もの被害に及んでいる可能性があります。

殺害予告で成立する罪

次に、殺害予告で成立する犯罪などについて見てみましょう。

業務妨害罪(刑法233条、234条)

一番多いのが、「業務妨害罪」です。

殺害を予告する行為は、「偽計」(233条)または「威力」(234条)を用いて、人の業務を妨害したものとして業務妨害罪となります。

「偽計」は人をだますなどの「はかりごと」をして業務を妨害する行為、「威力」は人の意志を制圧して業務を妨害する行為で、暴行・脅迫が典型例です。

つまり、ネット上の「〇〇店の客を殺してやる!」といった書き込みによって経営者が休業を余儀なくされれば、その店の業務が妨害されたことになり、「威力」による業務妨害にあたるといえます。

また、この場合、この殺害予告のために警察が警備・警戒などの活動を余儀なくされて、通常の業務に支障を生じれば、「偽計」による業務妨害にもあたると言えます。
(警察がターゲットになっているわけではないので警察に対しては「威力」にあたりません。)

「偽計」も「威力」も、妨害される具体的な危険性があれば犯罪は成立し、実際に妨害されたかどうかは関係ありません

このように、実際に誰かの利益が侵害される結果が生じていなくとも成立する犯罪を、講学上「危険犯」と呼びます。

業務妨害罪になると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

公務執行妨害罪(刑法95条1項)

「○○省職員の××を殺してやる」
「逮捕された□□を釈放しないと、△△小学校の生徒を殺すぞ」

上記のように、公務員に対して害悪を加えたり、第三者に害悪を加えたりする旨の脅迫によって公務員(市役所や警察など)の公務執行を妨害すると「公務執行妨害罪」にあたります。

ただ、実際の事案としては少ないと思われます。

これに該当すると、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科せられます。

脅迫罪(刑法222条)

「〇山△夫を殺す」
「×川□子の娘を殺します」

というように、特定の被害者やその親族の生命に危害を加える殺害予告は「脅迫罪」になります。

この場合、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

強要罪(刑法223条)

先述したような脅迫行為によって、人に義務のないことをさせたり、権利の行使を妨害すると「強要罪」となります。

例えば、「明日の放課後、体育館裏に来なかったら殺すからな」という脅迫によって無理やり相手に義務のないことを強要するものだと、この罪に該当します。

また、相手が指示した通りに従わなかったとしても、未遂罪として処罰される可能性があります。

強要罪は、3年以下の懲役刑が科せられます。

軽犯罪法違反

軽犯罪法は、「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者 」を拘留または科料で処罰しています(軽犯罪法1条31号)。

「悪戯など」とは、一時的な「たわむれ」で、それほど悪意のない行為です。

他人の業務を妨害する行為であっても、違法性の程度が低い場合は軽犯罪法違反で立件される可能性があります。

とはいえ、刑罰であることや前科がつくことに変わりはありません

損害賠償責任(民法709条)

上記のような刑罰だけでなく、損害賠償請求を受ける可能性もあります。

殺害予告により相手が損失を被った金額(営業損害や慰謝料など)が請求されますが、一般人には払いきれないような大きな額になることも少なくありません。

どこからが殺害予告で逮捕される基準なの?

では、実際にどのような書き込みをすると逮捕されてしまうのでしょうか。

具体的な例を見てみましょう。

明らかにアウトな書き込み例

「明日のイベントで△△を殺す」
「明後日の朝9時に□□駅で無差別殺人を起こします」

以上のように、個人名・ターゲットにする場所・時間などが明記されており、殺人が起こると予想できるような具体的な内容の書き込みは逮捕される可能性が高いです。

漠然とした内容でも逮捕はあり得る

前述のとおり、業務妨害罪は危険犯であり、実際に業務妨害の結果が発生しなくとも犯罪は成立します。

ただし、その殺害予告が、現実に業務の支障を生じさせるような具体的な危険がない場合には犯罪は成立しないとされるのが一般的な理解です。

逆に言えば、現実に具体的な危険がある内容だと評価される限り、逮捕される可能性があります

そのため、たとえ漠然とした内容言葉遊びをしたような投稿であっても、その具体的な内容によっては警察と被害者が警戒し、警備や捜査を行ったり休業など何らかの対処を行わざるを得ないという場合は、逮捕されてしまいます。

【逮捕されると考えられる殺害予告の書き込み事例】

  • 今日の午後9時に、埼京線の上野駅で人を殺しまくります
    ⇒架空の場所(埼京線には上野駅がない)ですが、書き込みをした者が誤解しているだけという可能性もあり、上野駅と特定されている以上は警察もJR東日本も警戒体制を余儀なくされますから、業務妨害で逮捕される可能性が高いです。
  • 明日、名古屋駅で無差別に人を投します」「小女子焼き殺す
    ⇒「殺す」を「投す」、小学生女子と誤解するように「小女子」などと書き換えていますが、これは検索されることを回避するための子細工に過ぎず、子どもに対する殺害予告であることは読み取れますから、業務妨害罪で逮捕される可能性が高いです。
  • 今から大量の子供を殺す
    ⇒場所などはわからないものの、警察は警戒・捜査を開始しますから、業務妨害罪で逮捕される可能性が高いです。

このように、曖昧な書き込みでも逮捕される危険性はあります。
他の事例も確認したい場合は、以下のページも参考にしてみてください。
【参考】
秋葉原事件以後のネット上犯行予告、検挙事例一覧
埼玉県警察:やめよう犯行予告!「いたずら書き」でも犯罪です!

匿名でも逮捕される

匿名で書いていても逮捕されるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

日本には「発信者情報開示請求」といった匿名相手を特定する制度があり、携帯会社やサイトの管理人などのプロバイダーから提供された情報で、個人情報が特定できるようになっています。

これにより、一般人でも弁護士に依頼すれば特定が可能であり、刑事告訴をされたり損害賠償請求をされたりする可能性があります。

また、そもそも警察は捜査関係事項照会書(刑訴法197条2項)でプロバイダーに投稿者の個人情報に関する報告を求めることができます。

さらに、これに応じない場合は、記録命令付差押許可令状(同法218条1項、99条の2)などによって強制的に情報を開示させることができるので、すぐに個人情報を入手できます。

そのため、匿名での投稿でも逮捕される可能性は十分にあるといえます。

逮捕されない書き込みとは?

逆に逮捕されない書き込みとはどんなものでしょうか。

「火星で人を殺します」
「かめはめ波で大量殺人します」

これらのような、明らかに空想と判断できる投稿では逮捕されないと考えられます。

では、次の投稿はどうでしょうか。

「明後日、火星で○山△夫を殺します」
「明日午前11時00分、渋谷のスクランブル交差点で、かめはめ波で大量殺人します」

火星には行けないこと、かめはめ波を出せないことは、誰にも明らかです。

しかし、「殺します」と名指しされた○山△夫さんは、これを放置できるでしょうか?
渋谷警察署はこれを無視できるでしょうか?

○山△夫さんは不安で店を開けられなくなったり、警察に相談して捜査が開始されたりする可能性も十分にあります。
渋谷署は、ハチ公前の交番の警察官を増員したり、駅前に警備体制を敷く可能性があるでしょう。

これらの投稿でも、業務を妨害する具体的な危険があると判断され、業務妨害罪になることがあります。

投稿者は冗談のつもりでも、予告された相手、警備しなくてはならない警察の立場になってみれば、それが業務に支障を生じさせる危険がある投稿かどうか容易に想像がつくのではないでしょうか。

安易な気持ちで殺害予告をするのは絶対にやめましょう。

もし殺害予告をしてしまったら?

以上のように、漠然とした殺害予告であっても逮捕されることがあります。

「どこまでならセーフかな?」とふざけて投稿することはしないようにしてください。

また、既に殺害予告をしてしまっている場合は、通報や捜査がされる前に自首することをお勧めします。
自首することで、刑が軽くなる・起訴されずにすむといった可能性もあります。

もし自首に抵抗があるなら、無料相談を活用して一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
弁護士には守秘義務があり、相談された内容を漏らすことはありません。
もちろん、警察に通報することもありません。

刑事事件に詳しい弁護士であれば、どのような行動をとればいいかアドバイスをしてくれるはずです。

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