SNS上のフォトハラ・ソーシャルハラスメントの問題点と対策方法
セクハラ・パワハラ・モラハラ・マタハラ…近年ではあらゆる言葉と組み合わせた「ハラスメント」が存在しています。
その中でも、SNSを利用したハラスメントである「SNSハラスメント」というものをご存じでしょうか?
特に、SNSハラスメントの中の「フォトハラ」は誰でも加害者・被害者になる可能性があり、注意が必要です。
今回は、SNSハラスメント・フォトハラの概要と、どうやって対処すればいいのかを解説していきます。
目次
SNSハラスメント(ソーシャルメディア・ハラスメント)とは
そもそも「SNSハラスメント」とは何でしょうか?
これは、簡単に言えばLINE・Twitter・InstagramといったSNSを利用した嫌がらせのことを指します。
他にも、「ソーシャルハラスメント」「ソーシャルメディア・ハラスメント」「ネットハラスメント」「ソーハラ」などと呼ばれたりもします。
場合によってはパワハラに分類されることもあります。
SNSハラスメントの中で最近増えているのが、プライベートな写真を友人・知人が勝手にSNS上にアップしてしまう「フォトハラ」です。
更に多いのは、職務上の地位や立場の優位性を背景にして行われる会社関係のハラスメントです。
上司からSNSハラスメントを受けると、部下は勤務時間外でもSNSを気にしなければならず、気疲れして仕事に対する意欲を失ってしまうことが多々あります。
一方、上司は「部下とのコミュニケーション」程度にしか考えておらず、自分の行動が部下を圧迫しているという自覚がないケースが多いです。
SNSハラスメントは、スマホやSNSを利用する人が増えたことによる新しい形のハラスメントといえます。
SNSハラスメント|上司や会社の事例
それでは、一体どのようなことがSNSハラスメントにあたるのでしょうか。
具体的に見ていきましょう。
アカウントの繋がりや反応の強要
Facebook・Instagram・TwitterといったSNSには、フォローや友達登録をしてアカウント同士を繋げることができます。
このとき、部下は望んでいないにも関わらず、上司のほうから繋がろうとしつこく言い寄ることはSNSハラスメントにあたります。
教えていないのに勝手にアカウントを発見して申請することも、ハラスメントとなる可能性があります。
また、1つ1つの投稿に対して「いいね」を押すように促したり、コメントをしてほしいと強要することもSNSハラスメントにあたります。
このような強要があると、部下は平日休日問わずSNSをチェックしなければならなくなり、気が休まる日がなくなってしまいます。
逆に、上司から自分の投稿の全てに対して反応が返されると「監視されている」と窮屈に感じてしまいます。
投稿についての会話
また、投稿内容について会社や職場で話すことも、場合によってはSNSハラスメントにあたります。
デートの写真や物を撮影した際に一緒に写ってしまった部屋の様子など、SNSにアップはしたものの現実では触れて欲しくないことも人によってありますよね。
そのことを考慮されず、「昨日家族でみなとみらい行ったんだね~」「一緒に写ってたの彼氏?」とプライベートを暴露されてしまうと、気分がよくありません。
家族生活や子供のことなどを上司に知られてしまうことを恐れて自由に投稿できなくなり、SNSを楽しめなくなってしまうケースもあります。
LINEによるパワハラ
特にLINEでは、激しいSNSハラスメントが行われやすい場となってしまっています。
なぜなら、LINEがTwitterやInstagramなどよりも、「連絡手段」として優秀なサービスだからです。
最近では、メールアドレスを交換するというよりLINEを交換する人の方が多いのではないでしょうか。
個人同士の連絡方法としても使えますし、グループを作ってチームで連絡を取り合うこともしやすいです。
また、LINEは原則として「1つのスマホで1つのアカウントしか持てない」というアプリです(ツインアプリやマルチユーザーなどの例外あり)。
そのため、個人と会社で使い分けることができないと同時に、「気づかなかった」が通用しにくいSNSとなってしまっています。
その結果、業務連絡とプライベートな交信が一緒になってしまい、時間に関係なく上司や同僚の会社関係の連絡に対応しなければならないのです。
さらに、LINEを業務連絡用に使っていないケースでも、上司や同僚にアカウントを発見されて「友だち申請」が来たら拒絶することはできないというプレッシャーもあります。
LINE強要問題とは?
SNSハラスメントに関係して、会社による「LINE強要問題」が多く発生しています。
LINE強要問題とは、会社の上司や同僚がLINEの友達登録をした上で、業務時間の内外を問わずさまざまな連絡をしてきて、返事を強要する問題です。
返事をしなかったり気づかなかったりすると、「〇〇さん、無視?」「既読スルー?」などと送ってくるので、返事せざるを得なくなってしまうのです。
会社のスマホならばオフにしておけば良いのですが、私的なスマホを業務に利用している場合、休日にも逃れる方法がなくなります。
あまりにも強く強要すると、パワハラと認定されて注意を受けることもあるので気をつけましょう。
最近話題のSNSハラスメント|フォトハラ
最近では、「フォトハラ」と言われるハラスメントが話題となっています。
SNSハラスメントの中でも特に問題視されており、多くの方が「迷惑」と感じているようです。
フォトハラとは?
フォトハラとは、「フォトハラスメント」の略称で、写真を使った嫌がらせのことを指します。
典型的な例としては、自分が写った写真を勝手にフェイスブックにあげられてしまうといったことが上げられます。
フォトハラの問題点
フォトハラには、以下のような問題があります。
肖像権・プライバシー権侵害
フォトハラが起こると「肖像権」や「プライバシー権」が侵害されます。
「肖像権」とは、勝手に自分の姿を写真撮影されたり写真を公開されたりしない権利、「プライバシー権」とは、私生活や私的な事項をみだりに開示されない権利のことをいいます。
FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSに、自分が写った写真を合意も得ずに勝手に投稿されると肖像権侵害となりえます。
また、自宅や日常生活の様子などが写った写真がSNSに投稿されると、プライバシー権侵害となりえます。
個人情報の流出
フォトハラでは、写っている人の個人情報が流出するおそれが高まります。
たとえば、自宅や近くの建物が写っていると住所を特定される可能性がありますし、写真に残った位置情報(Exifデータ)から場所を特定されるケースもあります。
一緒に写っている人から家族関係を推測される可能性も考えられ、自分だけの被害で収まらないことも大きな問題点です。
転載の可能性
ネット上に公開された写真は、意外と自分の知らないところで転載されていることがあります。
最悪の場合、勝手にアダルトサイトや出会い系サイト、匿名掲示板などに投稿されて、本人が重大な被害を受ける可能性もあります。
掲載元から写真を消したとしても、転載元が残っている限りはネットから完全に消すことができません。
一度被害が起きてしまうと、長い間悪影響を及ぼすことになってしまいます。
SNSハラスメントを防止するには?
それでは、SNSハラスメントをされないようにするにはどうすればいいのでしょうか。
ハラスメントを回避するための対処法
①自分の意思を伝える
一番効果的なのは、上司に対してはっきりと断ることです。
「プライベートでしか使わないと決めているので」と自分の意向を伝えるようにしましょう。
上司に対して難しい場合もあるかもしれませんが、最初にしっかり断るのが大切ですので、頑張りましょう。
嫌いな上司だけ教えない、といった態度では相手に不快な思いをさせてしまうかもしれませんが、会社内の人にも教えていなかったり、ごく一部の人にしか教えていない状況であれば、相手も納得してくれるでしょう。
それでもしつこく強要してくるようだったら、会社内の相談窓口や人事部を活用したり、話しやすい他の上司に相談してみるといいでしょう。
②アカウントがバレないようにする
実名で利用していると、検索によってアカウントがバレて友達申請をされる可能性があります。
そこで、鍵を掛けて非公開アカウントにしたり、匿名で誰もわからないような名前にしてSNSを利用することも1つの手です。
ただ、会社内でSNSを見ているところを気づかれてアカウントがバレてしまう、といったことも考えられるので、社内でSNSを利用する際は注意が必要です。
また、TwitterやInstagramなど、複数のアカウントを作れるSNSであれば会社用とプライベート用でわける方法もあります。
さきほど、LINEは1つのスマホで1つのアカウントしか作れないとご紹介しましたが、ツインアプリ機能やandroidのマルチユーザー機能を使うと複数のアカウントを使える場合もあります。
一番使う機会の多いLINEも、この方法で対処することが可能です。
③写真について敏感になる
これは特にフォトハラの対策ですが、自分が写る写真について神経質になることも大切です。
本当にネット上に自分の写真を上げられたくないのであれば、写真になるべく写らないようにする、自分のカメラで撮影するときだけ写真に入る、相手に「ネットに投稿しないで」と伝えるなど、徹底しましょう。
もしもネット上で友人が自分の写っている写真を投稿しているのを見つけたら、すぐに連絡をして削除してもらうか、自分の顔の部分を黒塗りにする、スタンプを貼ってもらうなど対処してもらいましょう。
SNSハラスメント|嫌がらせ行為があれば訴えることも可能
FacebookでもTwitterでもLINEでも、SNSハラスメントの中には法的問題があるものも存在します。
例えば、ストーカー行為や脅迫、義務のない行為の強要、名誉毀損などがあった場合です。
こうした違法な嫌がらせは、場合によっては犯罪になることもあります(ストーカー規制法違反など)。
また、犯罪とはならずとも損害賠償や慰謝料を請求できるケースもあるので、SNSハラスメントで悩んでいる場合は一度警察や弁護士に相談してみるはいかがでしょうか。
まとめ
以上が、SNSハラスメントの概要と対処法でした。
SNSハラスメントは、自分が加害者になることも被害者になることもありうる問題です。
自分がハラスメントを回避するための対策をすることは勿論、自身が加害者にならないように会社関係を部下や同僚のプライベートなSNSに持ち込まないよう注意するようにしましょう。