ネット名誉毀損で刑事告訴!警察に加害者を逮捕してもらう方法

逮捕

インターネットを利用していると、いわれのない誹謗中傷を受けることがあります。

名誉毀損の書き込みをされることもありますし、SNSで嫌がらせを受けたり、罵倒されたり、営業妨害や業務妨害を受けたりすることもあります。リベンジポルノによる被害もあるでしょう。

このようなネット上の書き込みによる被害を受けた場合、加害者を警察に逮捕してもらって刑罰を受けさせたいと思うことが多いですが、警察は必ずしも動いてくれるとは限りません。

警察に動いてもらうには、そのための適切な対処方法を押さえておく必要があります。

そこで今回は、ネット名誉毀損・誹謗中傷やSNS嫌がらせなどの被害を受けた場合に警察に動いてもらって加害者を逮捕する方法を解説します。

SNSで嫌がらせ!相手を名誉毀損で逮捕してもらう方法は?

ネット上、特にSNS上で、不当な誹謗中傷・名誉毀損の書き込みによって被害を受けることがよくあります。

悪口・侮辱を受けるだけではなく、個人情報の晒し、リベンジポルノ被害なども受けることもあります。

このような嫌がらせは、名誉毀損罪、プライバシーの侵害、リベンジポルノ防止法違反にあたるはずで、警察に動いてもらい逮捕もしてもらい、加害者に刑事罰を受けさせることができるはずです。

しかし、ネット上で被害を受けたからと言って、必ずしも警察が動いてくれるとは限りません。警察が逮捕に向けて動くには、犯罪が起こったと疑われる捜査の端緒が必要です。犯罪が行われたという要件に該当することが必要なのです。

Twitterなどの名誉毀損、悪口で、個人情報が晒されたりで、警察が動かない理由は、名誉毀損の構成要件が満たされていない可能性があります。

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Twitterの晒し・いじめ・なりすまし等で警察は動かない?

一般的に、警察はネット犯罪の取り締まりに消極的なのではないかと言われることがあります。

確かに、ネット犯罪は相談件数の割に受理件数が少ないです。

具体的には、相談件数としては、平成12年には2000件弱だったものが平成20年以後は年間1万件を超えており、大幅に増加していますが、平成22年~24年までの相談受理件数は200件前後にとどまっているのが現状です。

このように、警察がネット犯罪の取り締まりに消極的なのは、ネット犯罪についてはそもそも犯罪が成立するかどうかの見極めが難しいことや、立証が困難であったり、警察に専門家がいなかったりすることがその理由となっていると考えられます。

名誉毀損の構成要件とは?

名誉毀損罪は刑法第230条第1項で「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。

ここでいう「公然と」ですが、インターネット・SNS上の書き込みの場合、構成要件を満たすことには通常問題はありません。

また「事実を適示し」との条文ですが、「その事実の有無にかかわらず」と書いてあるように、真実であるか偽りであるかは問わないということがポイントです。

なお、名誉毀損罪は、人の社会的評価を低下させるものかどうかについて問題になります。たとえば、相手が特定されていない書き込みについて、「この書き込みは自分のことだと思う」などと思い込みによって警察に相談しても、実際に動いてくれることはないでしょうし、「ぼくとあの人とは仲が良くないです」と書かれていたことを不快に感じたとしても、それだけで名誉毀損にはなりません。

単に自尊心を傷つけられたというだけでは、名誉毀損罪に問うことは難しいのです。これでは、警察も積極的には動いてもらえません。

名誉毀損罪における免責

名誉毀損罪の構成要件に該当する場合でも、次の3つの条件をすべて満たす場合は、免責されます。

  • 公共の利害に関する事実にかかわるものであること
  • 専ら公益を図る目的があること
  • 真実であると証明されるか、真実であると信ずるについて相当の理由があること

名誉毀損の時効

さらに、名誉毀損で逮捕してもらうためには、公訴時効にも注意が必要です。

犯罪にも時効があるので、問題となる行為からあまりに時間が経過していると、追及することができなくなります。

刑事上名誉毀損罪の公訴時効3年なので、犯罪行為が終わった時から3年が経過すると、もはや警察に相談に行っても動いてもらうことができません(刑事訴訟法253条1項)。

また公訴時効にかかる期間と、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効にかかる期間は異なります。

損害賠償請求権の消滅時効は、加害者を知った時から3年間か不法行為の時から20年間のいずれか早いほうに成立し、公訴時効よりも成立までに時間があります。

刑事告訴ができなくても、民事裁判による損害賠償はできるので、忘れないでおきましょう。

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名誉毀損で逮捕の具体例

次に、名誉毀損による逮捕の具体例を確認しましょう。

ネット犯罪による名誉毀損については、警察は消極的な面は否めませんが、実際に動いて名誉毀損罪で逮捕されている事例もあります。

拓殖大の客員教授の名誉毀損の事例

たとえば、拓殖大の客員教授が「2ちゃんねる」上において、計33回にわたって執拗に攻撃された事案では、加害者の23歳の北大生の男性が名誉毀損罪によって逮捕・起訴されました。

この事案では、加害者に対し、懲役1年6月執行猶予3年の判決が下されています。

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「人間のくず」書き込みによる実刑判決の裁判例

ある男性が乗用車を運転中に男子高校生をひいてしまい、業務上過失致死罪に問われた裁判中に、(2001年7月)に、加害者がネット上でその男性を「人間のくず」と書き込み、両親の実名まで掲載した事案では、大阪地裁が、加害者に対し、懲役1年4月の実刑判決を言い渡しています。

加害者は控訴しましたが、大阪高裁は控訴を棄却し、最高裁でも上告が棄却されたため、実刑が確定しました。

このように、ネットにおける誹謗中傷でも、悪質な場合には警察も動いてくれて逮捕起訴してもらうことができますし、懲役刑、ときには実刑まで受けさせることも可能なので、諦める必要はありません。

刑事告訴と被害届の違い

警察に名誉毀損の被害などを相談して手続をすすめてもらうためには、警察に被害申告のための書類を提出しなければなりません。

警察に被害申告する方法としては、被害届と告訴状があります。

被害届とは、単に「被害を受けました」という申告書です。警察がその内容を見て、必要だと判断したら実際に動いて加害者を逮捕することになります。

これに対し、告訴状は、「被害を受けたので相手を処罰してほしい」と警察に申し立てる書類です。

警察が告訴状を受理したら、基本的にそれに従って捜査をして、必要に応じて相手を逮捕する必要があります。告訴状は、被害届よりも強い効力があります。

また、犯罪には親告罪と言って、警察が動くために必ず告訴状が必要になるタイプの犯罪があります。ネット誹謗中傷でよく問題になる名誉毀損罪も親告罪なので、名誉毀損によって相手を逮捕してもらうためには、被害届ではなく告訴状を提出する必要があります。

なお、名誉毀損罪の告訴期間は、犯人を知った日から6か月以内に限定されています。ここでいう「犯人を知った」とは、犯人が誰であるか特定できたという意味です。犯人の氏名や住所を知らなくても、犯人が特定できたら犯人を知ったことになり、告訴期間が起算されます。

警察に被害届を提出する方法

被害届を提出する方法をご紹介します。

被害届は、用紙が警察に備え付けてありますので、基本的にその用紙に被害内容を書き込んで警察に提出するだけです。

ネット犯罪の被害届を出すなら、各都道府県のサイバー犯罪窓口(サイバーポリス)に連絡をして手続きすると良いでしょう。

警察に相談に行くときには、以下の情報やものを用意しておきましょう。

  • 被害者の氏名、住所、年齢、職業
  • 判明している限りの加害者の情報(住所、氏名、年齢、職業など)
  • 該当サイト名とURL、投稿日時
  • 誹謗中傷記事があるページを印刷するか、スクリーンショットで保存したもの
  • 印鑑、身分証明書
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警察に告訴状を提出する方法

次に、告訴状の提出方法をご説明します。

告訴状を提出する場合も、提出先は被害届の場合と同様、警察署です。

ただ、この場合作成が必要な告訴状の内容は、被害届よりもかなり詳しいもの、つまり具体的には被害内容が犯罪の構成要件に該当することを説明しなければなりません。

また同時に証拠も提出しないと、警察は動いてくれません。

きちんと適切に告訴状の内容を記載出来るかどうかによって、警察が動いてくれるかどうかが変わってきます。

そこで、告訴状を提出するときには、自分1人で作成するのではなく、弁護士に依頼することをおすすめします

弁護士は法律のプロなので、相手の行為がどのような罪になるのかをわかりやすくきちんと告訴状に書いてくれますし、証拠もそろえて警察に提出してくれます。

告訴状受理後の流れと手続き|起訴・刑事裁判

ネット名誉毀損を受けたとき、相手に対して告訴状を提出して受理されたら、その内容を警察が見て、問題があると判断したら実際に捜査を開始して、相手を逮捕してくれます。

加害者が逮捕されたら、相手は警察の留置場に身柄拘束されます。もし軽微な事件などで勾留が行われなかったらすぐに身柄が解放されますが、重大な事案の場合には引き続き勾留されます。

勾留期間は10日ですが、捜査のために必要があれば、さらに10日間延びます。

拘留期限の10日後、検察官が「起訴」するか判断

勾留中、警察が捜査を進めて証拠を集めます。

そして、勾留期間が切れるとき、検察官が被疑者を起訴するか、不起訴にするか決めます。

起訴されたら、相手は刑事裁判にかかり、その裁判の中で相手が有罪か無罪かについて審理が行われます。有罪の場合には、刑罰も決定されます。

このようにして、最終的に相手が悪質で有罪と言うことになると、相手に「罰金刑」「懲役刑」などを受けさせることができます。

刑事裁判では示談で刑を軽くする

刑事手続きによっては被害者が損害賠償金を受け取ることはできません。

ただ刑事裁判では、被害者と示談が成立していると情状が良くなって加害者側の刑が軽くなります。

そこで、加害者が逮捕されたり、起訴されたりしたら、加害者側の弁護士から被害者に連絡が来て「〇〇円で示談してほしい」とか「示談の話し合いをしたい」などと言って、示談金を支払う場合があります。

この点でも、警察に動いてもらって相手を逮捕・起訴してもらう意味はあると言えます。

ネット誹謗中傷の相談は法律の専門家へ

最後に、ネット犯罪による被害を法律の専門家に相談するメリットをご紹介します。

被害者が自分一人で対応していても、警察はまともに取り合ってくれないことも多いですし、きちんと適切に証拠を揃えることもできないので諦めてしまいがちです。

しかし弁護士に相談・依頼すると、アドバイスをしてくれるので手続を適切にすすめることができます。

また、法律のプロが自分の味方になってくれるということで大きな安心感を得られます。

さらに、告訴状を作成する際、被害者が自分で効果的な内容の書面を作成することはかなり難しいですが、弁護士であれば法律的な観点から、適切な告訴状を作成してくれるので助かります。

被害者が自分一人で警察に告訴状を持っていっても、証拠がないとか、必要なことが書かれていないなどと言われてなかなか受け付けてもらえないことも多いですが、弁護士に依頼すると、そのような問題がなくなり、告訴状を受け付けてもらいやすくなります。

弁護士が書いたら、告訴状の内容がしっかりしているので告訴後の手続き進行もスムーズになりますし、警察からの連絡なども弁護士が受けてくれることもあり、被害者の精神的な負担が軽減出来ます。

ネット誹謗中傷などの被害に遭って、加害者を逮捕してもらいたいと考えている方は、まずは一度、弁護士に相談に行ってみましょう。

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まとめ

今回は、ネット誹謗中傷などの被害に遭った場合に、加害者を逮捕してもらって刑罰を受けさせる方法について解説しました。

ネット誹謗中傷は、名誉毀損や侮辱罪、営業妨害や業務妨害罪などの犯罪になりますし、リベンジポルノもリベンジポルノ防止法におって罰されます。

警察に動いてもらうためには、きちんと証拠を揃えて、適切な内容の告訴状を作成して提出する必要があります。

ところが、警察はネット犯罪に対して消極的な面がありますし、被害者が自分一人で対応していると、適切な対応ができず、見過ごされてしまうことも多いです。そこで、ネット犯罪の被害を受けて、加害者に罰を受けさせたい場合には、弁護士に相談をしましょう。

弁護士であれば、証拠を揃えて効果的な告訴状を作成して、警察の手続きをスムーズにすすめてくれます。

今回の記事を参考にして、上手に警察とのやり取りをすすめ、相手に適切な罰を受けさせましょう。

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