ネットの侮辱罪とは?慰謝料、構成要件、時効などを詳しく解説
この記事では、侮辱罪について詳しく解説します。構成要件、時効など事例を交えて解説します。また、侮辱行為を受けた場合に…[続きを読む]
ヤフーニュースのコメント欄(いわゆる「ヤフコメ」)には不規則発言が相次いでおり、中には誹謗中傷に当たると思われるコメントも散見されます。
たとえ匿名のコメントであっても、実名の場合と同様に、他人に対する誹謗中傷に当たり得ることに変わりはありません。
ヤフーニュースなどにコメントを投稿する際には、良識とリテラシーをもって内容を吟味してください。
この記事では、ヤフーニュースのコメント欄での誹謗中傷について、名誉毀損への該当性や発信者情報開示請求などを中心に解説します。
目次
ヤフーニュースのコメント欄では、ニュースで話題になっている芸能人を侮辱するなど、たくさんの誹謗中傷コメントが溢れています。
たとえ匿名であっても、刑事上・民事上の名誉毀損に該当し、刑事罰や損害賠償などの対象になるおそれがあるので、コメントを投稿する際には十分注意してください。
以下の2つの要件を満たす行為について、名誉毀損罪により処罰する旨が刑法で定められています(刑法230条1項)。
コメント中で何らかの事実が摘示されていれば、それが真実であるかどうかにかかわらず、上記①の要件を満たし、名誉毀損罪に該当する可能性があります。
たとえば「〇〇は不倫をしている」とコメントした場合には、不倫をしていることが真実であってもなくても、名誉毀損罪が成立します。
なお、名誉権と表現の自由の調整を図るため、以下の要件をすべて満たす場合には、名誉毀損罪は「不成立」となります(刑法230条の2第1項)。
<公共の利害に関する場合の特例>
・当該行為が公共の利害に関する事実に関係すること
・当該行為の目的が専ら公益を図ることにあったこと
・摘示した事実が真実であることの証明があったこと※
※真実性を誤信した場合、誤信したことについて確実な資料・根拠に照らし相当な理由があれば、犯罪の故意が否定されて名誉毀損罪は不成立となります(最高裁昭和44年6月25日判決)。
あくまでも正当な言論の範囲であれば、表現の自由として保護されるべきですが、単にストレス解消の目的で根拠のない暴言を書き込む行為は、名誉毀損罪として処罰され得ることを理解しておきましょう。
名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。
なお、誹謗中傷コメント中に事実の摘示がない場合には「侮辱罪」が成立し、拘留または科料に処されるおそれがあります(刑法231条)。
ヤフーニュースの誹謗中傷コメントには、刑事上の名誉毀損罪とは別に、民事上の「名誉毀損」(不法行為。民法709条)が成立する可能性があります。
誹謗中傷コメントが不法行為に該当するのは、以下の要件をすべて満たす場合です。
たとえば、ヤフーニュースに投稿された事実無根の誹謗中傷コメントによって、実際に「芸能人のイメージ」が損なわれた場合には、投稿者は被害者である芸能人に対して損害賠償責任を負います。
ヤフーニュースを運営するヤフー株式会社は、誹謗中傷コメントに関する対処方針を、以下のとおり公式に発表しています。
ヤフー株式会社の利用規約では、ヤフーニュースを含むサービスの利用者に対して、誹謗中傷コメントを含む他人の権利侵害・迷惑となるコメントの投稿を禁止しています。
第1章 総則
サービス利用にあたっての順守事項
当社のサービスのご利用に際しては以下に定める行為(それらを誘発する行為や準備行為も含みます)を禁止いたします。
社会規範・公序良俗に反するものや、他人の権利を侵害し、または他人の迷惑となるようなものを、投稿、掲載、開示、提供または送信(以下これらを総称して「投稿など」といいます)したりする行為*
*抜粋引用:利用規約 第1編 基本ガイドライン|YAHOO! JAPAN https://about.yahoo.co.jp/common/terms/chapter1/#cf1st
さらに、ヤフーニュースに関するコメントポリシーでも、以下のとおり誹謗中傷コメントを明文で禁止し、違反した者には法的措置を講ずる可能性がある旨を宣言しています。
「あなたの意見が誰かの「気づき」や「共感」の種となるよう、ご利用いただくみなさんに対して思いやりをもってコメント欄をお使いいただき、誹謗(ひぼう)・中傷その他コメントポリシーに違反するコメントの投稿はご遠慮ください。
残念ながらコメントポリシーを遵守いただけない場合は、後述のとおり、掲載・投稿の制限を行う可能性があります。自己の権利を侵害されたと主張する方から発信者情報開示請求を受けた場合、法令上の手続きに則り、開示を行う場合があります。また、犯罪予告や名誉棄損、侮辱、信用棄損、業務妨害罪などに該当するコメントが投稿された場合、警察に通報することがあります。」
抜粋引用:Yahoo!ニュース コメントポリシー|YAHOO! JAPAN https://news.yahoo.co.jp/info/comment-policy
ヤフー株式会社は、ヤフーニュースにおける不快な投稿・規約違反の投稿の削除依頼を受け付けるフォームを設置しています。
参考:不快な投稿・規約違反の投稿を削除してほしい|YAHOO! JAPAN https://support.yahoo-net.jp/PccNews/s/article/H000006461
コメントの削除を希望する場合には、フォーム上で削除すべき理由を記載して送信すると、ヤフーが削除の要否について審査を行います。
ただし、個別の審査結果について、報告者に対する回答は行われないので注意しましょう。
フォームから削除依頼を行っても、ヤフー株式会社が問題のひどすぎるコメントを削除してくれるとは限りません。
その理由は、主に以下のいずれかによります。
ひどいコメントに対して、どのような感想を抱くかは人それぞれです。
中には誰が見ても誹謗中傷であるとわかるコメントもありますが、人によって意見が分かれるものもあります。
つまり、報告をした人が「誹謗中傷だ」と感じたとしても、ヤフー株式会社は「誹謗中傷ではない」と判断するケースもあるのです。
もちろん、どちらが正しいかは一概には言えませんが、ヤフー株式会社として「誹謗中傷ではない」と判断した場合は、コメントが削除されない結果となります。
ヤフーニュースには日々無数のコメントが投稿されており、それに対応して誹謗中傷コメントの削除依頼も、フォームを通じて多数寄せられています。
ヤフー株式会社としても、そのすべてを真剣に検討するだけの人員リソースは持ち合わせていないでしょうから、どうしても個別の削除依頼に関する検討は浅くなってしまいがちです。
その結果、本来は誹謗中傷と評価すべきコメントが見落とされ、削除されずに残ってしまう可能性があります。
誹謗中傷コメントによる被害を受けたにもかかわらず、ヤフーがコメントを削除してくれない場合は、各種の法的措置を通じて被害の回復を図りましょう。
ヤフー株式会社に対して直接コメントの削除を求める方法としては、裁判所にコメント削除の仮処分を申し立てることが考えられます(民事保全法23条2項)。
誹謗中傷コメントによって、被害者に著しい損害または急迫の危険が生じるおそれがあると認められた場合には、裁判所がヤフー株式会社に対して、コメント削除の仮処分命令を発令します。
仮処分命令が得られれば、ヤフー株式会社はそれに応じてコメントを削除しますので、被害者の名誉が毀損されている状態をいったん解消することができるでしょう。
被害者としては、投稿者に対する損害賠償請求も検討したいところです。
しかし、ヤフーニュースのコメントが実名で行われることはほぼないので、「発信者情報開示請求」により投稿者を特定する必要があります。
具体的には、まず被害者がヤフー株式会社に対して、投稿者の個人情報を開示すべき旨の「発信者情報開示請求」を行います。
発信者情報開示請求は、コメントの削除と同様、仮処分申立ての方法によって行うのが一般的です。
発信者情報開示請求の結果、ヤフー株式会社から投稿者の個人情報の開示を受けられれば、それを参照して投稿者に損害賠償請求を行います。
なお、偽名で登録されているなどの理由によって、ヤフー株式会社から投稿者の個人情報の開示を受けられなかった場合には、投稿に用いられた端末のIPアドレスの開示をヤフー株式会社に請求します。
そのうえで、インターネット回線のプロバイダーに対してさらに発信者情報開示請求を行い、投稿者の個人情報を特定することになります。
投稿者が特定できたら、内容証明郵便や訴訟手続きを通じて、投稿者に対して損害賠償請求を行います。
特に訴訟では、コメント内容が誹謗中傷に当たる理由や、被害者が実際に受けた損害の金額などを主張・立証しなければなりません。
訴訟準備や訴訟手続きの遂行については、弁護士のサポートを受けるとスムーズに対応できますので、誹謗中傷コメントの被害に遭った方は一度弁護士までご相談ください。
ヤフーニュースなどに誹謗中傷コメントが投稿された場合、速やかに削除に向けて行動しなければ、コメントが多くの人の目に留まり、被害が拡大してしまいます。
誹謗中傷コメントを削除させるためには、サイトの運営会社に直接削除依頼をする方法がもっとも簡単ですが、削除に応じてくれるとは限りません。
そのため、仮処分申立てなどの法的手続きを視野に入れて、迅速に対応する必要があります。
弁護士に相談すれば、発信者情報開示請求・損害賠償請求の手続き準備をスムーズに行い、被害者の名誉が一刻も早く回復されるようにサポートしてくれるでしょう。
誹謗中傷コメントによる被害にお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。