送信防止措置依頼書の書き方【入門編】
プロバイダ責任制限法では、被害者に「送信防止措置請求権」「発信者情報開示請求権」を認めています。誹謗中傷の該当記事を…[続きを読む]
現在、転職活動を考えている方や求職活動中という方は、さまざまな方法で企業の情報を集めようとしています。
特に「カイシャの評判」というサイトでは、文字通り会社の評判や会社の社風などがわかるサイトです。
利用者にとっては便利なサイトですが、企業側にとっては悪評の書き込みや嘘が書き込まれるなどのデメリットもあります。
そこで今回は、カイシャの評判に書き込んだ場合相手にバレてしまうのか、またカイシャの評判に書き込まれた悪評の書き込みを削除する方法などを解説します。
「カイシャの評判」はエン・ジャパングループが提供する口コミの会社情報サイトです。
毎日のように会社に関する情報が収集され、日々更新されているため、現在の就職・転職活動には欠かせないツールといえるかもしれません。
そして、この情報の中でも利用者が一番チェックしている点が、口コミです。
実際に働いている方や働いていた方の当該会社に対する口コミが投稿されています。
口コミの内容は、会社の強みや将来性、給与・年収、勤務時間などに関することです。実際働いていた時に状況や社内の雰囲気まで書き込めるようになっています。
会社の傾向がすぐにわかる「評判グラフ」も導入していることから、社員側から見た会社の評価がわかることになります。
このように、「カイシャの評判」は、就職・転職活動中の方にとっては、実際の社員(元社員)の生の声を聞けるというメリットがあるサイトとなっています。
「カイシャの評判」の最大の特徴は口コミ数の多さにあります。
というのも、口コミ1つ1つでは、個人の主観が入ってしまうため、情報の信頼性は高いとは言えませんが、数が多くなると全体として客観性が高くなり、情報の価値が上がります。
また、利用者にとっても多くの口コミをチェックすることができるので、自分に合っている会社かどうかをチェックしやすくなるというメリットがあります。
「カイシャの評判」の口コミ数は、日本最大級であり、100万件以上の口コミが集まっています。
次に、すべての情報は無料であるということです。登録さえすれば誰でも自由に閲覧することが可能となります。無料であるがゆえに利用者が多く、ここに書かれる内容は影響力が絶大となります。
社員や元社員へのアンケート結果をもとに、平均年収や職場の雰囲気などの60項目以上の項目から会社を分析し、レポートとして公開しています。
単に口コミを掲載するだけではなく、レポートとして分析した上で公開することにより、利用者にとってよりわかりやすい内容になっています。
評判スコアという部分では、会社ごとに平均点が算出されています。
サイト上、特に大事だと思う6項目について解答平均値を算出することで、会社の評判点数がパッとみてすぐにわかるようになっています。
最後に、他社の比較が簡単に行える点です。
興味ある2社について「企業分析・研究レポート」がボタンを押すだけで比較できます。
気になっている企業が複数ある場合に、比較しやすいシステムになっているため、利用者にとっては大変使いやすいシステムになっています。
口コミは、ご存知の通り良い口コミばかりではありません。個人の体験談だけでなく、主観も入っているため、時には嘘や悪い口コミを書き込まれることもあります。
良い口コミが多い場合、会社のイメージがよく優秀な人材が集まりやすいというメリットがあります。
しかし、逆に悪い口コミが多い場合には、転職・就職希望者は応募することすらしなくなってしまい、優秀な人材が集まらなくなってしまうというデメリットが発生します。
ひどいケースでは、他の掲示板などで悪評が話題になってしまうこともあり、企業イメージ自体がダウンしてしまう可能性もあります。
このように、嘘や悪評が書き込まれた場合には、企業としては大きな影響を受けるわけですが、この点につき、「カイシャの評判」はどのような対策をとっているのでしょうか。
公式ホームページに記載された情報によると、情報の信頼性を確保するために以下のことを実施しているようです。
まず、嘘や悪い点だけでなく、良い点・気になる点などを両方のポイントを書き込んでもらうことにより、意見の偏りを減少させるという施策をとっています。
また、口コミの内容は、運営事務局ですべて確認しています。
「カイシャの評判」には、利用規約がありこの基準に満たない口コミは表示しないことにしています。そのため、法令に違反する行為や誹謗中傷の書き込みなどは掲載されない仕組みとなっています。
お話しした通り、「カイシャの評判」でも悪評に対する対策は講じています。しかし、この対策は万全とはいえず、中には誹謗中傷に近いものや企業の信用を貶める書き込みがあるケースもあります。そんな事態に備え、口コミを削除する方法を利用規約とともにみてきましょう。
では、「カイシャの評判」の利用規約はどのような内容になっているのでしょうか。
利用規約8条(送信情報)3項では、一定の場合に口コミについて削除または公開・掲載の一時停止をすることができることを規定しています。
多くの事由が規定されていますが、削除請求をする側として知っておくべき条項は以下の通りです。
上記の4の中の「禁止行為」という文言については「10条(禁止行為)」に規定があります。
禁止行為は19項目記載されていますが、ここでは割愛し、必要となりそうな部分のみ、下記に記載します。
以上が、利用規約にて知っておくべき内容と言えます。
基本的には、法令違反行為や第三者の法的権利(プライバシー、名誉権、信用)などを傷付ける行為や犯罪行為などについては、削除対応を行うと考えて良いでしょう。
では名誉毀損の口コミを削除したい場合はどうすればよいでしょうか?
まず、削除はメール連絡などで行うことはできず「書類の送付」により行うことが記載されています。
口コミ削除を依頼する場合は、「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」をインターネット上で検索し、ダウンロードします。この中に、必要事項を記入し、郵送で提出することになります。
この書類には、「悪評は真実ではない」「誹謗中傷にあたる」「プライバシーを侵害する」などのように「法的権利が侵害されている」ことを記述します。
その後、郵送し、書面到着後に、運営事務局で内容を確認し、権利侵害行為などがある場合には、削除を実行してもらえます。
書面の内容に不備がある場合は、返信などができない場合もありますので、送る場合は下記内容をしっかり確認しましょう。
また、削除するかどうかは運営事務局側の判断となります。
削除依頼をしたとしても、規約に違反しないとの判断が行われた場合には削除を実施しないこともあるということを理解しておきましょう。
次は、削除依頼をする際の注意点について見てきましょう。
削除請求の際の権利侵害の内容については、「具体的に記載」する必要があります。
企業の法務担当者や担当弁護士が対処する場合は、きちんと権利侵害について記述してくれると思いますので問題ありませんが、小規模の会社で法務担当者がいないというケースでは、特に注意が必要です。
権利侵害とは、相手の法的権利を侵害する行為であり、本件のような場合で、具体的にいうと、会社の社会的評価や信用を低下させるような行為を意味します。
誹謗中傷といえるほどの厳しい表現や「バカ・死ね」などの個人特定をした場合の罵倒が投稿されている場合は、分かりやすい例ですのでその文言通りに記述すれば削除の対応を行ってもらえる可能性が高いでしょう。
しかし、実際問題になる事例というのは、個人の体験も入り混じった投稿内容になるため、どのような表現が実際に「権利侵害」当たるのかという判断が、極めて難しくなります。
例えば「この会社はブラック企業だ」という書き込みがあったとしましょう。
この場合「労基法違反を犯している会社だ」というイメージを当該会社の就職希望者に与える可能性があります。そのため、当該会社の信用を低下させる行為だと言えそうです。
しかし、「上司がキツイ」「仕事内容としては微妙・つまらない」「楽しくない」「やりがいを感じられなかった」という表現の場合では、どうでしょうか。
これらの場合、個人の体験を主観的に表現した個人的感想であり、このような意見を表明することは表現の自由の一部として保障されています。
そのため、会社の評判を貶めた行為や信用を低下させる行為とは言い難いでしょう。
したがって、個人的感想を述べているケースで、会社にとってはあまり良くない情報が書き込まれている場合に、削除対応をとってもらうことはかなり厳しくなります。
投稿者が一体誰なのかが知りたい場合、自分でサイト側に訴えかけるのみでは対応してもらえないこともあります。
というのも、「カイシャの評判」側としては、利用者の個人情報を守らなければ、口コミの数も減ってしまうため、よほどの権利侵害があると確認できる場合でないと登録情報を提供することはないでしょう。
そのため、投稿者の特定は弁護士に依頼することが賢明な判断だと思います。
では、弁護士に相談する場合、どのように投稿者の特定を行うのでしょうか。
まず、「カイシャの評判」に対し、投稿者情報の公開請求を任意で行います。これに応じていただけない場合は、裁判所に「仮処分」を訴えることになります。
これが無事通り、公開されたら、その後は投稿者に対し連絡をとり選択した対処方法を実行することになります。
今後根拠のない誹謗中傷を行わないことをについて警告を促す、名誉毀損等による損害賠償を請求する、刑事告訴をするなどの選択肢があります。
こちらは、弁護士に相談した段階で、あらかじめ対処策を決めることになるはずです。
このように、投稿者の特定には弁護士が必要になります。誹謗中傷などの犯人を特定したい場合は、早めに弁護士又は弁護士事務所に相談してください。
では、弁護士事務所に依頼するとどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
インターネット上で根拠ない悪評を書かれてしまった場合には、投稿者の特定や損害賠償請求をすることが考えられます。それぞれ費用は別にかかり、以下が大体の目安となります。
まず、投稿者の特定についてです。裁判外で行う場合は、着手金・報酬金あわせて、20-30万程度が相場となります。
裁判にて仮処分などの措置を取るケースでは、着手金・報酬金合わせて、45万円-60万円程度がかかることになります。これ以外にも、ベット裁判所費用が数万円かかることになります。
次に、損害賠償請求についてです。裁判外で行う場合は、着手金は10万円程度で、報酬金は慰謝料の16%が相場となります。
裁判にて損害賠償請求を行う場合は、着手金が20-30万円程度かかり、報酬金は慰謝料の16%が相場になります。
投稿者の特定と同様に、これ以外にも裁判所費用が数万円(約3万円)かかります。
このように、弁護士に依頼する場合は、最低でも50万円程度かかることになります。
もちろん、弁護士事務所によって費用は異なりますので、あくまでも目安程度と考えてください。どちらにしても大きな費用がかかりますので、損害賠償請求でどの程度請求できるのかなどを弁護士事務所に相談の上で決断することが望ましいでしょう。